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「「京は世界一だから価値があった...」、@ohnuki_tsuyoshi さんからのスレッド

「京は世界一だから価値があった。世界一にならなければ誰にも知られない。山の名前を見てみろ」とか言う人に、「じゃあ京以外で世界一になったことのあるスパコンの名前をいくつ言える?」って聞くと、ほとんどの人がひとつも言えなかった。京が日本で有名になったのは「事業仕分けされたから」

京が事業仕分けされずに世界2位になっていたら、小さな科学記事としてほとんどの国民の目に触れなかっただろう。1位になっても、たいした関心は持たれなかっただろう。京と富岳の間にいったいどれほどのスパコンが日本で作られたか、大半の人は興味ないでしょうに。

ちなみに、富岳が世界一を奪還する前まで「日本最速のスパコン」だったのは京ではなく、産総研の「ABCI」なのですが、その利用事例のインタビュー集は僕が担当していますので、是非ご覧下さい。abci.ai/ja/link/use_ca…

「世界一でなくなっても、京を使い続ければ良いのに」なんて話も聞いたけど、スパコンの性能は10年で100倍、10年前の1位は現在の500位ぐらいになってしまう。古いPCを修理するより新しいPCを買った方が高性能で安い、というのと同じ話になる。

「世界一でなくなっても、京を使い続ければ良いのに」なんて話も聞いたけど、スパコンの性能は10年で100倍...

だから、5年で10倍に速くなってしまう世界で世界一を取るのは本当に一瞬のことでしかなくて、もし計画が1年遅れたらそれだけでランクは下がってしまう。でも、重要なのは「1台のスパコンの最高速度」ではなくて、「どれだけ多くの計算をできるか」ってこと。

ベンチマークテストのようにひとつの処理でスパコンが占有されるなんてことは普通はなくて、たくさんの計算が同時に行われてる。だから、最速のスパコン1台と、その1/10の性能のスパコン20台だったらどっちが役に立つ?ということも考えないといけない。

じゃあ、スパコンをたくさん持ってる国はどこよ、と見ていくと、TOP500の半分弱が中国にある。200隻の大艦隊に向かって、30隻で「こっちには世界最大の戦艦があるぜ」って言ってるわけだが、なんか80年ぐらい前にも聞いたパターンのような気がする。

じゃあ、世界最速のスパコンは不要なのかというと、そんなことはない。世界最速のスパコンは「10年後の普通のスパコン」なので、10年後に普通のスパコンを使いこなせるソフトウェア開発、技術者育成、そもそもの用途の発掘に役立つ。「京がなければ日本のスパコン技術者は育たなかった」とも聞いた。

京ができる前は、スパコンを使える(能力や経験がある)のは大学や国の研究機関などばかりで、企業の研究者はほとんど使っていなかったと聞いた。それが、「京を使ってみませんか」とアプローチしたことで、日本企業にもスパコンを使える技術者が増えたのだと。

余談だが、アメリカのスパコン台数が中国の半数以下に見えるが、あれは「AWSとかはカウントされてないから」ってことらしいので、ある意味中国の方が「国威発揚のために情報公開してる」って面もあるらしい。

こうやって見ていくと、必要なのは「世界最速のスパコン」ではなく「世界最速を目指すスパコン技術」なのだということがわかる。べつに、結果として2位だとしてもさしたる違いはない。どっちも10年後には500位になっている技術なのだから。でも、500位のスパコンを使いこなせる技術が必要なのだ。

「スパコンを使いこなすことが重要」という話では、僕がインタビューさせていただいたこちらのお話がとても面白かった。
abci.ai/ja/case-8/case…
中国では若い技術者が膨大な計算機資源を「遊び」に使わせてもらっている。それが技術と人材を育てている。10年後、日本とどれほど差がつくか。

「スパコンを使ったディープラーニングで、囲碁に勝つ」という、それだけ見れば何の役にも立たない遊びに、国や企業がスパコンを使わせている。その量が日中でまるで違う。そこから育つ技術者の経験値と人数も。

スパコンを使いこなす技術の育成、という観点ではこちらのインタビューが面白かった。
abci.ai/ja/case-3/case…
計算速度が100倍に上がっても、通信速度は100倍に上がらないから、並列処理ではそっちがボトルネックになる。そこで、通信量を抑えるアルゴリズムとのバランスが重要になる。

単純にベンチマークテストで世界一をとってドヤっても、それを現実の解析で利用する場合には、使い手のノウハウで数倍の速度差が出てしまう。だから「10年後の普通のスパコン」を使いこなすノウハウを、いま世界最速のスパコンで編み出す必要がある。

「世界」を宇宙に拡げることを仕事にしたいと考える自営業者。主な仕事は科学ライター。主な趣味はパラグライダー。フォローしていない方のmention通知は切っているので気付かないことがあります。お仕事に関する依頼・お問い合わせは contact@下記URLのドメイン のメールへお願いします。アイコンは自撮り(FaceApp

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  2. 大貫剛
  3. 2020/06/24 00:43:56 公開
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