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「そしかい仲良し赤→安♀が飲むの...」、@snkitn17 さんからのスレッド

そしかい仲良し赤→安♀が飲むのは大体れいちゃんち。初めて家に招かれた時は期待もしたけど、犬を一人にしないためだと気づいたら力が抜けた。別に彼女に結婚の話も持ち上がっていないし、長期戦でもドンと来いと思っていたある日、やっぱりれいの家で飲んでる時のこと。

「今度一晩アダムお借りしていいですか?」
「捜査か?」
「いえ、ちょっと僕の相手として」
「ああ、ボクシングの」
「あー、いや、そうでもなくて…まあいっか、あかいだから言っちゃいますけど、あれです。せっくすの相手です」
思わずナッツを口に含もうとした格好のまま凝視するあかい。

れいの耳はほんのり赤くなっていて、わざとらしく手元に視線が落ちている。珍しく、照れている。愛らしいと思うのにその理由が自分じゃないのだと考えると怒りとも悲しみともつかない感情が腹に渦巻く。小さく咳払いをして、あかいは口を開いた。
「一体…どういうことかな。まずなぜ俺に聞くんだ?」

「彼が言ったんですよ。頼んだ時。あなたに聞けって」
あかいがれいに思いを寄せていることは仲間内では周知の事実である。その場で断らず、あかいに直接れい本人から話が行くように仕向けたアダムによくやった、と心で告げる。
「次に…どうしてか、理由が知りたい。安全な遊び相手がほしいのか?」

「遊び相手っていうか〜…んんん〜」
れいは指先で氷をぐるぐるとかき回し、ちらりと赤井を見てグラスの中身をぐっと呷った。その程度で酔わないことはお互い知っている。ただ思い切るきっかけをつくりたかったのだということも、お互い知っている。
「他言無用ですよ」
「ああ」

「…初めてを、捨てたいんです」
「初めて…?」
「もうぼく30じゃないですか。わかります?30まで未経験である気持ちが!年とればとるほどプレッシャー増えてくし、もういっそちゃちゃっと捨てちゃいたいんです!」
「君、その、すこっちは…」
「あなた男女の友情は成り立たない派ですか?

前も言ったと思いますけどぼくらそんなんじゃないです。彼氏とか友達とか、今ある言葉じゃ表せないくらい大事な人だし、そこにこんな面倒なこと持ち込みません」
れいはツンと顎を上げて自分のグラスにだけ酒をついだ。あかいの飲むペースはいつもより何倍も遅い。酒など飲んでる場合ではないのだ。

「…なんでアダムなんだ」
「普通にいい人だし、あと恋人もいないし。あなたのお仲間からそういうのもうまいって聞きましたし…あとなにより、彼再来週帰国するでしょう?もうきっと会うことはないでしょうし後腐れなくできます」
れいはちびちびと酒を舐めながら指折り数え、あ、と言った。

「あと割と見てくれが好きなんで」
「あいつの!?」
「うわうるさ、そんな大声出せたんですか?」
「そんなことはどうでもいい。あいつのこと…か、かっこいいとか思ってるのか」
「顔も普通に良いし筋肉も綺麗についてますよね?」
前言撤回だ。アダムとは色々と話し合わなくてはならない。

でも今大事なのは目の前の彼女。
「…あいつはやめた方がいい」
「なんでです?」
「まず第一にあいつはそんなに上手くない」
きょとんとしていたれいの顔に困惑の表情が広がり、躊躇いがちに口を開く。
「えっ…と、それは経験談ですか…?」
「違うっ!」

思わず大きくなった声にれいの眉間に皺がより、二本の指で机を二回タップした。三度目はないぞ、と。
「…すまん。体験談じゃないが君とは別のソースからそう聞いているよ」
「ふむ…意見がわかれているのは少し不安ですね」
「そうだろう?そして第二に、あいつは本気になったらしつこい。アピールも

熱烈だし、君を手に入れるためにここに残ろうとするかもしれない」
「でも本気になったら、ですよね?ぼくに彼がそうなるとは…」
「あいつの元カノは俺が知る限り皆金髪のショートだよ」
嘘である。ブロンド好きなのは確かだが、全員ではないし長さもまちまちだ。嘘をつく時は真実を混ぜて。定石だ。

あかいは唇を舐め、れいと視線を絡めた。
「……俺はどうかな」
「え〜〜〜あかいぃ?」
「うん」
「いやですよ!」
「俺の顔は嫌いか…?」
「そんなこと考えたことなかったですけど…別に嫌いじゃないですよ。時々死ぬほど人相悪いですけど見なれたらまあ気になりませんし」
「なら、」

「そういう問題じゃないんですよ!あかいに裸見られたり変な声聞かれるのなんて無理です!あなたは知りませんけど、ぼく友達とはそういうことしないんで!」
友達と認められている嬉しさと、友達止まりである現実が綯い交ぜとなってあかいを攻撃する。あかいは息をつき、コトリとグラスを置いた。

「実は…来週俺も帰国するんだ。それならどうだ」
「え、そんな話、」
「今日上から連絡があってね。至急来るように、と。来週の金曜の便で帰ることになった」
これもまた、完全な真実ではない。たしかに急遽帰国することになった。しかしそれは二ヶ月の間だけだ。二ヶ月経てば、また戻ってくる。

そんなことはつゆ知らぬれいは、あかいを見上げて笑顔をつくった。
「自分でもびっくりなんですけど…少し残念です。あなたと話すのは結構楽しかったし」
騙してこんな顔をさせている罪悪感が頭をもたげても、あかいはグラスの中身を飲み干すことで言葉も飲み込んだ。そして代わりに、

「どうかな」
と言って見せた。れいは目を瞑り、んんん、と唸りながらまた指先で氷をかき回す。迷っている。
「ていうか、今までのぼくの話聞いてこんなこと言うって相当そっちの自信があるんですね?」
「必ず、満足させてみせるよ」
そう言った瞬間、ぎゅっと閉じられていた瞳がパッと開いた。

「わかりました!お願いします!」
「本当か!?」
「ええ。視覚と聴覚は目隠しでもイヤホンでも対処できますからね」
「それは…一種のプレイじゃないか?」
「…まあいいです。お礼、何がいいですか?できることならなんでもしますよ」
「今はまだ考えつかないよ。それよりお願いがある」

「お願い?」
「これからできる限り毎晩、カップルとしての時間を過ごそう」
「せっくす以外に、って意味ですか?」
「そうだ」
「…なんのために?」
「来週いきなりやろうとしても難しいからだよ。俺たちは…友達だけど、友達とはしないことをする。その距離感に慣れておかないと」

「なるほど…わかりました。できない日もあるかもしれませんが、なるべく時間取れるようにします。…ちなみに、どんなことするんですか?」
「…そうだな、手を繋いだり、ハグしてみたり…まあなんでもいい。簡単なところから始めよう」
笑みを浮かべてそう言うと、れいも口角を上げた。

「…いいでしょう」
れいがグラスを持ち上げ、あかいもそれにならった。二つがぶつかり、かちん、という小さな音を鳴らした。その音は二人の関係が変わり始める合図だった。

*
翌日、仕事を終えたれいをエントランスで待ち構えていたのは煙草を燻らすあかいだった。
「すみません、お待たせしました」
「いや。行こうか」
れいが駆け寄ると、あかいは吸殻を灰皿に捨て、二人一緒に外へ出た。少し歩くとあかいは立ち止まり、す、と手を差し出す。

れいは足を止め、手のひらとあかいの顔を交互に見つめた。
「あの、さすがにこの近くでは…誰かに見られるかもしれませんし」
「そんなのどこでも同じだよ」
「でも、」
「わかった。じゃあ君にタイミングは任せるよ」
あかいが前に向き直り、れいもまた足を動かした。

明日は一緒に帰ろう、とメールが来たのは昨日のことだ。その続きには、あかいが家まで送ること、そしてその前に少しデートをしようというお誘いが書かれていた。
「それで、デートってなにするんですか?」
「散歩でもどうかと思って。大丈夫、遅くにはしないから」
ハロのためだとわかった。

ありがとうございます、と小さく礼を言い、あかいのあとをついていく。方向から、庁舎近くにある大きな公園に向かっているのだと気づいた。
噴水の近くにはまだ、道路に面していることもあって見知った顔はあったが、中に足を踏み入れればもう近くに同僚どころか人自体疎らだった。

れいはあかいとの会話を続けつつタイミングを伺っていた。手を繋ぐなんて一体いつ以来だろう。最後は確か…小学生の時の遠足か?そのせいか、今までなんとも思ったことがないあかい相手なのに、ただ手を接触させるだけなのに変に緊張してしまう。手のひらにじんわりと汗が浮かんで、余計繋ぎにくい。

普段はポケットに突っ込まれている手が体の横で揺れている。れいはそっと手を後ろにまわした。見えないようスカートで拭って息を整え、えいっと指先を掴む。
「……もうやってくれないのかと思ったよ」
笑み混じりにそう言われ、れいの耳がなぜか熱くなる。
「うるさいですよ」

「だがこれは…そうだな、少し指の力を抜いて」
言われた通りにすると、あかいの手がするりと動いた。大きくて少し冷たいあかいの手が一回り小さなれいの手を包む。なんだか、さっきとは違う。思っていたのとも違う。ただ手が当たるだけだと思っていたけれど、手を繋ぐってそれだけじゃないみたいだ。

息が上がりそうなほど心臓がどきどきしているのは暑さのせいだろうか。
それとも、
「緊張した?」
「するわけないじゃないですか」
即座に返したのは図星だからだ。れいは指に力を込めてやった。痛いな、と笑われるのもまたなんだか腹が立つ。

気が済むまでギリギリと握り締めてやったあと力を抜けば、俺は、とあかいが言った。
「俺はしたよ。いつ繋いでくれるんだろう、って」
「え、そんなことで緊張するんですか?あかいが?なんで?」
可笑しくて、笑いながら見上げたけれど、あかいは何も言わず、ただ笑ってごまかされた。

それからは肩の力が抜け、たまにすれ違う人を嫌に意識することもなく、ただ楽しく歩くことができた。
公園は広い。けれど、静かな池や咲き誇る花壇の周りをれいの蘊蓄話や、外で話しても問題ないレベルでの仕事の話をしていればあっという間で、気づいたら入った方とは反対側の道路に出ていた。

向かい側にあるパーキングにあかいの車は止めてあった。ドアを開けると、夏特有の昼間の熱のこもった空気が溢れる。そこには煙草と、あかいが使っているフレグランスの匂いが溶け込んでいる。そういえば、と思い出す。ライの頃は今とは別の香りをまとっていた。あの時は本人自体が嫌いなこともあって

匂いまで嫌いだったけれど、今嗅いだらどう思うだろうか。今でも嗅いだだけで腹が立つだろうか。それとも、改めて嗅いでみたら案外好きな匂いだったりするのだろうか。
「今度昔の香水つけてきてくださいよ」
そう言うと、シートベルトを締めたあかいは不思議そうな顔をしていた。

「あれ、臭いから近寄るなって言う位には嫌いじゃなかったか?」
「前はそうでした。でもなんか改めて試してみたくて」
「ああ…だがもう使い切ってしまったんだ。廃盤になってしまったし」
「あ、そうなんですか」
ゆっくりと車が動き出し、ゲートへと向かう。ラジオから何かの音楽が小さく流れ出す。

「前はああいうのが好みだったんですか?」
道路に出た時にそう言うと、ああ、と短く返ってくる。そしてあかいは
「彼女にもらった」
と言った。
今あかいの頭の中にいる人物と同じ人を思い浮かべている自信があった。
今のあかいの横顔は、れいが親友たちのことを考える時のものとどこか似ている。

いつも頭の中に、心の中にいるのに忘れていく。彼らはどんな匂いがして、どんな声で話していたのか。そしてこうやって思い出す手段もなくなっていく。それが大切な人をなくした世界を生きるということなのかもしれないけれど、忘れる自分への怒りや、言いようもない寂しさを感じる時がある。

れいは何を言うのも相応しくないように感じて、そうなんですね、とだけ言った。
静かな車内にラジオの音楽だけが流れる。さっきわからなかった曲は有名なミュージカル曲だと気づいた。親友達も、彼女も、若くして亡くなった。だけど人生の測り方は時間だけじゃない。

れいもあかいも何も言わず、車は滑らかに街を走る。新鮮な助手席からの景色を眺めた。沈黙が心地よかった。

れいの家の前に着くと、なぜかあかいも車から降りた。
「え、あ、今日は…」
「ああ違う違う。今日は上がらないよ」
そして目の前に立ち、すっと腕を広げた。
「おやすみのハグ」
「嘘でしょ…」
「本気だよ。付き合ってるんだから」
あかいが仲間たちとハグしている姿は見たことあるが、

れいとしたことはなかった。なんとなく気恥ずかしくて避けようと
「でも、ほら、はやく行かないと車来ますよ」
こう言っても、あかいは
「ならはやく来てくれ」
と言うばかりだ。
あかいなら車が来ようと目的を果たすまでは動かない、なんてことをしかねない。
ああもう、と言ってれいは腕の中に

飛び込んだ。するとすぐに背中に腕が回され、全身に絶妙な圧がかかる。
目の前の胸板からは車の中に広がっていたフレグランスとあかい本人の匂いがした。
「……今の香水も悪くないですよ」
小さくそう言うと、あかいが喉の奥で笑った声が頭の上から落ちてきた。
そして背中の腕がひとつ離れて、

首の後ろにそっと手のひらが当てられる。
「ありがとう。おやすみ」
あかいは耳元でそう言ってようやく離れた。覗き込むようにして笑みを浮かべ、それから車で去っていく後ろ姿をれいはただ突っ立って眺めていた。耳から入った痺れが体の奥で燻っていて暫くの間動くことができなかった。

それから三日がたち、火曜日の夜。二人はれいの家にいた。後ろから料理を覗き込まれることや、となりあってご飯を食べる距離。今までだったら気にならなかったこと全てにれいはどぎまぎしてしまう。
あかいを男として意識している自覚と恥ずかしさが綯い交ぜになって頭がパンクしそうだ。

そして食事中はまだ続いていた会話も、晩酌の時にはついに途切れた。唾を飲み込む音すらも聞こえてしまいそうな静けさに耐えきれず、テレビのリモコンに伸ばした手にあかいのものが重なった。
「な、んですか?」
ひんやりした手のひらを重ねたまま、あかいは何も言わずにじっとれいを見つめている。

「もう、なに」
「テレビはつけないで」
「う…」
さっき話していた時とは声の雰囲気が違う。この前の帰り際に耳でささやかれた時のものと同じ、どこか色を感じる声だ。
体の芯が痺れるような感じがして、頬があつくて、触れ合っている指先にも熱が集まる。目をそらすと、あかいがくすりと笑った。

「いちゃいちゃしよう」
「いちゃ……えっ!?」
目を剥くれいと対照的にあかいはすごく楽しそうだ。
「もう今はカップルの時間なんだからいいだろ?ダメ?」
「だ、めじゃないけど、いっ、いちゃいちゃってなにするんですか!」
ばっと手を引っ込めるれいにあかいはふむ、と眉をあげる。

「俺は君がしたくないこと以外なら全部やりたいよ。キスしたりハグしたり、触ったり」
「さ、触ったり……」
「触るのはだめ?」
「その聞き方はずるいでしょ!」
ソファの上でれいは膝を抱え、顔を押し付けた。あついあついあつい。頬も耳もなにもかもがあつい。触られる瞬間が頭に駆け巡っている。

「じゃあまず体勢を変えよう。ソファの上で一緒に横になるか……」
「え、いっ、しょにって、どうやって…?」
「さすがに隣合うことは出来ないからどっちかが下になるしかないな」
「そ、それは無理です!パス!」
「じゃあもう一つの方になるな。俺が座って、君がその上に乗る。それならどう?」

それなら、まだ、マシかも。恥ずかしくないかもしれない。れいは既に曲げた首を僅かにコクリと動かした。
ソファが揺れ、あかいが動いたことを教える。ちらりと目をあげれば、あかいがソファの端で深く座り直し、指先で腿を軽く叩いていた。まるで、おいで、と言っているように。

れいは一度ぎゅっと目を閉じ、立ち上がった。あかいの顔は見ないようにして近づく。こんな短い距離なのになぜか遠く感じる。ようやく膝先まで辿り着き、ゆっくり腰を下ろした。耳の中で鼓動が響いている。
あかいがトレーニングしてるところは何度か見たことがある。

れいより何十キロも重いおもりをつけたバーベルを使ってスクワットだってしていた。
でもそれとこれとは別問題だ。重い、って思われたくない。スウェットの中の足に思わず力が入る。少しでも体を浮かせたい。
「…随分軽いな?」
「そ、そうで……うわっ」
ぐっと肩を引き寄せられ、

あかいの足の上でぺたんと尻をついた。
「これくらいの方が君が実感できていいな」
そう口角を上げたのをれいは睨んだ。
「言っておきますけど40キロは筋肉ですからね」
「ほかは何キロ?」
太ももを抓ってやるとあかいは大袈裟に痛がり、それでやっと溜飲を下げた。少しいつもの雰囲気に戻ってきた。

「冗談だよ」
「ふん」
「それより、俺は跨いでもらおうと思ってたんだが」
あかいの視線を辿らなくても言いたいことはわかっている。れいは今足を揃え、赤井に対して横向きに乗っていた。もう部屋着のズボンに履き替えていて、跨ることはできる。でも跨ってしまったら、完全にせっくすの体制になる。

万が一あかいのものに自分のものが当たってしまったら、恥ずかしくて死にかねない。
「この体勢がいいんです!」
「…わかった。じゃあこのままにしよう。ただ落ちないよう気をつけて」
あかいがまた肩を抱き寄せてきた。あのフレグランスがふわりと香る。れいのものと混ざり、でも案外いい匂いだ。

あかいがふ、と笑い声をこぼした。
「何笑ってるんです?」
「なんでもない」
そしてすっと手を取る。
「なに…」
「繋ぎたいから繋いだだけ」
れいの左の指先をすくいあげる形で繋いでいる。そこに優しい視線を落とすあかいの横顔をれいはそっと見つめた。嫌いな顔ではないし、元々整っているとは

思っていたが、こんな目をされたら恥ずかしくなってしまう。じょでぃもあけみも、こんな顔されて普通でいられたのだろうか。
「ま、前の彼女といちゃつくときもこうだったんですか?」
そう聞くとあかいの眉尻がきゅっと下がった。
「今ここには俺と君しかいなくて、俺は君だけを

考えてるのにそんな無粋なこと言うのはやめてくれ。前の彼女は関係ないだろ」
そして左手の甲にキスを落とした。キザな振る舞いなのに妙に合っていて、頭の片隅に生まれた引っ掛かりがどこかへ飛んでいってしまった。熱視線に思考が溶ける。
あ。と気づいた瞬間に、頬に何かが押し当てられる感覚。

キスだと気づくのに時間はかからなかった。頬からこめかみ、額、鼻の頭、と唇が移動していく。目を閉じてしまったらキスを待っているようで恥ずかしくて、れいは何度も何度も瞬きをした。なんだかやけに唾がたまって、飲み込んだらゴクリと音が鳴った。あかいの口端がくっと上がる。

「…笑うな」
「すまん」
全然悪びれずにそう言ったあかいの指先がれいの下唇を撫でる。
「いい?」
頷くとすぐ、あかいのそれが重ねられた。どきどきはするけれど想像していたほどじゃない。なんて思っていたつかの間、れいの唇にぬるりとしたものが滑った。あたたかくて、柔らかく、濡れた舌に

動揺を隠せない。目も口も皺がよるくらいぎゅっと閉じた。
「あけて」
ふるふると首を振ると、少しだけ乱れた髪をあかいが撫で付け、顕になった耳に口を寄せた。
「絶対気持ちいいから」
そして啄むように口を吸われ、れいの唇がほどけた。それはあかいのキスのせいかもしれないし、れいが

気持ちいいという言葉に惹かれたからかもしれない。
僅かにあいた隙間からあかいは舌を差し込み、れいのものと合わせた。れいの体はびくりと震えた。触れ合った先端から電流が流れてくるみたいだ。キスなんて大したことないじゃないか、なんて思ったのは間違いだった。死にそうなほど恥ずかしくて、

何かが腰に走る。
「気持ちいい?」
わけもわからずれいは頷いた。でもそうか、この、少し強すぎるほどの何か、がきもちいいってことなのかもしれない。
触れ合う面積が増えれば増えるほど何も考えられなくなっていく。ゆったりとしたあかいの舌の動きに翻弄されて、なのにそれがまたほしくなる。

「んぅっ!?」
「嫌なら、殴っていいから」
あかいの右手がれいの膨らみに添えられた。キスでいっぱいいっぱいで、指から離れたことにも気づかなかった。
あかいの大きな手のひらが形を確認するようにやんわりと揉む。れいのものは決して小さくないけれど、あかいの手のひらには収まるサイズだった。

あかいの手が触れている。そう思うだけで恥ずかしくて、身体が敏感になっていくのを感じる。ブラの中で一点が硬さを持ち始めているのを知られたくない。背中を逃がそうとするれいの肩を掴むあかい手に力が少し入り始めた。もしかしてあかいも興奮してる?頭がくらくらする。

そしてあかいの指がれいの先端を掠めた。
「んやぁっ…」
勝手に擦り合う足と甘えるような自分の声に驚いて、れいはあかいの肩を押した。離れたあかいの口はどちらのものかわからない唾液で光り、瞳には欲が灯っている。こんなあかい知らない。これまで以上に、友達じゃないあかいに戸惑う。どうしよう

何を言えばいいのかわからない。
「ふるやく、」
「かっ、帰ってください!」
れいはあかいの腕を抜け出して洗面所に駆け込んだ。後ろ手に鍵を閉め、背中をドアに預ける。
「ふるやくん」
れいは口を開けなかった。羞恥と混乱で頭が回らない。息が上がってるのが伝わらないように口を手で押さえる。

「こわがらせたなら悪かった。でも」
ドア越しにあかいが動く音がする。
「明後日は、最後までするから」
まるで耳元で囁かれているような錯覚に陥る。れいはずるずると座り込んだ。
「じゃあ、また」
そう言ってしばらくした後、玄関のドアが開く音がした。

立てずにいると、ハロが爪でドアをカリカリ引っ掻く振動が伝わってきた。れいは手を伸ばし、鍵を開けてドアを開いた。心配そうに登ってくるハロをぎゅっと抱きしめる。ハロの高い体温に次第に緊張がとけ、追いやったはずの頭の引っ掛かりが戻ってくる。
「ハロ、どうしよう…」
小さな呟きは

誰に受け取られることもなく消えていった。どうするか決めるのはれいだ。自分自身で考えなくてはならない。

*
宣言通り木曜にあかいは再びれいの家を訪れた。この二日間全く顔を合わせていない。会議はなく、れいが自分のデスクのある部屋に閉じこもっていたからだ。恥ずかしがっていたのだろう、玄関を開ければきっとまた赤い顔をしたれいが出迎えるのだろうというあかいの想像を裏切るように、

れいの表情は固かった。
「どうした?」
「いえ…どうぞ、入ってください」
れいに導かれるまま、あかいはリビングに進んだ。もはや定位置となりつつあるソファに座ると、れいもその隣に座った。ただし、間をあけて。
「ふるやくん、」
「お話があります」
俯いたれいと視線は合わない。

「せっ、くすの話、なかったことにしてほしいんです」
やっぱり、というのがあかいの本音だった。表情に加え、普段ならお茶かコーヒーはいるか聞いてくれるのに今日はそれがなかったのだ。早く帰そうとしている。とはいえ引き下がるつもりはない。
「…理由は?」
そう聞くとれいは一瞬目を合わせ、

しかしまた俯いてしまう。
「この前のが嫌だった?」
れいはなにも言わない。
「それとも、俺が嫌?」
膝の上のれいの手が白くなるほど握り締められ、かすかに震えている。そっと覗き込むと、瞳には涙の膜が張っていた。
あかいもれいも何も言わず、ハロの寝息だけが聞こえる。

たっぷりと時間をかけ、れいは体を折って膝に顔をうずめた。そして大きく息をつき、
「……逆、なんです」
と弱々しい声で言った。
「逆?」
「キス、も、この前のも…よかったし、あなたとは話も合うし…友達以上の関係になるのって、こう、すごく恥ずかしいけど、すごくいいかもって思っちゃった」

告白には似つかわしくない表情でれいは訥々と語り、あかいはそれにただ頷く。
「でも…だからこそ、ここで踏みとどまらなきゃって思ったんです」
「どうして?」
「だって本当に最後までしちゃったら…もし誰かと結婚しても、あなたのこと忘れられなくなる…あなたがほしくてほしくてたまらなくなる」

「…どうしてそこで俺と付き合おうって考えにならないんだ」
「だってあかいはぼくのこと好きじゃないでしょ…」
あかいは嘆息し、髪をかきあげた。
「好きでもない相手に、せっくすの提案なんてしないとは思わないのかい?」
俯いたままのれいの耳が赤く染まる。
「……ぼくのことすきなの…?」

「そうだよ」
「そう、なんだ……」
くぐもった声は少し嬉しそうであかいも口端をあげた。しかしすぐにれいは首を振った。
「でもだめ」
「なぜ?」
「だって付き合ったらいつか別れなくちゃいけないでしょ…お互い仕事柄、いつ死ぬともわからない、連絡だって頻繁には取れない。

あなたは過去の彼女も大切に思ってくれる人だって知ってますけど…ぼくは、あなたの過去になんてなりたくないんです。…友達なら、過去にならない」
「友達にも終わりはあるよ」
れいがほんの少し顔を傾け、どういう意味かと視線で問う。
「同じ小学校や中学校で仲良くしてたのに高校生になって連絡を

取らなくなった友人は何人いる?君にはそんな人いないか?高校に上がってもずっと仲良くしていたか?」
「それは…」
「俺は、結局互いの努力次第なんだと思うよ。電話が出来なければメールでも、短くても、元気だとか、愛してるって伝えあう…関係を切らさない努力次第。過去になりたくないくらいには

俺なことが大好きなのに、互いの気持ちを惹きつけ合う努力なんて、きみはしたくないか?やる前から諦めるのか?」
「でもだってあなたそんなんで満足できるんですか?もういい大人で、結婚だって考えるでしょ、せっくすだって…」
「どちらも君以外とする気ない」
れいは赤い顔を上げ、指の隙間から

あかいを見た。
「でも…でも……明日帰っちゃうんでしょう…?」
潤んだ視線を受け、あかいは額をかく。
「…先週、一つお願いを聞いてくれるって言ったよな」
れいは怪訝そうに頷く。なぜ今?と。
「お願いだ、嘘をひとつ許してほしい……明日の便には乗るが二ヶ月で戻ってくる」
れいの顔が驚き四割

嬉しさ四割、怒り二割の表情に染まる。
「あなた…本当に…っ」
「まあまあ、でもとりあえずこの二ヶ月は遠距離の練習にでもしたらいいじゃないか。いつか来るかもしれないんだか、痛い痛い、抓らないでくれ」
「まず言うべきことは?」
「嘘をついて悪かった」
ふん、とれいは

あかいの頬をつまむ指を離した。すっかり涙はひいている。そしてそのままあいていた距離を詰め、肩に頭を押し付けた。
「……許してあげます」
「それで…どう?」
「僕のこの態度みてわかりませんか?」
れいがそう言うとあかいは静かな笑い声を漏らし、れいの頭にキスを落とした。

明日からの二ヶ月はきっとこれまでとは違ったものになる。小さな隙間時間も残さず使って相手を思い、電話やメールをして、大事な人を離さないように、関係を続けられるようにする努力をしていくのだ。

しばらくその体勢のままでいて息を整え、れいは決死の覚悟で口を開いた。
「今日泊まっていきますよね」
顔も見られず、早口になったのをあかいが笑って、れいはさらに恥ずかしい気分になる。
「是非」
あかいの指がれいのものと絡む。
「……お風呂、どっち先に入ります?」
「君に任せるよ。

…だが先に言っておくが、今日は最後までしない」
「なっ、なんでですか?最後までするって…」
「軽いペッティングで逃げ出しちゃうような子にはまだ、っ」
れいは指を離して両手であかいの薄い頬を挟み、勢いのまま口付けた。あかいにされたのを思い出しながら唇を割り開き、ぎこちなく絡めると

あかいはすぐに応えてくれる。愛飲する煙草の苦さがあかいの味だ。舌を吸われ、擦り合わされ、擽られるように高められると結局れいの方の息があがり、リップ音をさせてなんとか顔を離した。
「舐め、ないでくださいよ…ちゃんと心の準備、してきたんだから…」
息も絶え絶えにそういうと、

あかいの目に色が強く乗る。
「…風呂は後回しだ」
立ち上がり、れいの体を抱き上げる。
「今すぐしよう」
れいが首筋に押し付けた真っ赤な顔をこくりと動かすやいなや、あかいは足を進めた。そして二人は寝室に消えていった。

おしまい!

成人済 マーレです😌 にょたが好き 赤安:景零:安赤=7.5:2:0.5 別腹で🇹🇭 文字しか書けませぬ marshmallow-qa.com/snkitn17?utm_m…

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  3. 2020/07/23 01:30:37 公開
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