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「とある貴.族会に来たショタエゴく...」、@mamemmemme さんからのスレッド

とある貴.族会に来たショタエゴくん、某名門校入学にはまだまだ遠い幼さがあるけど非常に聡明な子で、礼儀も立ち振る舞いも完璧なんだけど、その日は年相応の態度というか周りも分かるほど苛々してた。原因は先程からちょこまかうろうろと食べ物に釣られてマナーを忘れそうになるいぅまち♀で、同い年

位なのにどうしてこうも落ち着きがなくマイペースなのかとイラッイラしながらも世話を焼いてるエゴくん。いぅまちは幼いながらもエゴくんの婚約者で、そもそも以前いぅまちがやらかした事にエゴくんが巻き込まれたのが出会いなんだけど、そのやらかしってのが婚約を申し込む行為でしかも相当古い習わし

だったんで双方それと知らず結婚の約束を結んでしまったという最悪の経緯がある。今では殆ど見ない方法だけどすぐに解消するのも体裁が悪いということで一応婚約者という立場のままなんで、いぅまちがやらかさないよう見張…エスコートすることになるエゴくん。幼いのにしっかりしてる。むしろ幼い

という事を差し引いても礼儀やらテーブルマナーやら怪しいいぅまちの世話でこんな幼い頃から眉間の皺が増えるエゴくん。周囲はただただ微笑ましい。サおじいちゃんは泣いている。
主催者のご厚意で会場だけでなくお屋敷や庭(勿論立ち入り禁止の所以外)を見て回って良いということで、早速大人の交流に

飽きた貴族の子供達が(礼儀正しく)屋敷内や庭園を楽しみ、いぅまちもキラキラとした目で行きたそうにしてるから、ここに置いて大勢の前で粗相をしでかすよりはと渋々会場の外に連れ出すエゴくん。エゴくん父に許可は取ったけどいぅまち祖父は引き留めようと最後までただ捏ねてたんで、エゴくんは冷たい

視線だけで返事していぅまちを連れ出した。子供好きな主催者夫婦が「見て回っておいで」と勧めただけあって他の子達もいぅまちも楽しく過ごす。エゴくんはそこから少し離れた椅子に座りながら、緊張から解放されて年相応に振る舞う他の子供達に混じってぴょこぴょこと動く青を眺めてる。するとその青…

いぅまちが近寄ってきて「今からみんなでおもしろいもの見にいくんだって。いっしょに行こ」って誘ってくるんだけど、いぅまちが主催者の子息の手を握ってる事が不快で「勝手に行けよ。お前の子守は疲れる」と突き放す。いぅまちは泣きそうな顔でぽつりと謝り、隣で気まずそうにしてる主催者の子息や

他の子供達と一緒にどこかに行ってしまう。エゴくんはやっと自由になれたのにスッキリしない気持ちを抱えたまま暫くの間休んでたんだけど、泣きそうな顔が頭から離れなくて、他の奴に迷惑をかけてこちらにも泥を塗られるよりはと理由を作ってやっと立ち上がる。先ほどまでちらほらいた子供達はまばらで

行き先を訊ねながらいぅまちを探すエゴくん。婚約者がいる身で易々と異性の手を握るなだとかスカートが捲れるほど走ってないだろうなとか他の奴らにいつもの無知を晒して恥をかいてないかとか、いぅまちへの不満を心の中でたらたらと零しながら探すも全く見つからない。何処にいても目に留まるような

ふにゃふにゃと緩む情けない顔を思い浮かべながらツカツカと大きな音を立てて歩き回るエゴくん。そして途中で少しだけ開いてる扉を見つける。最初いぅまちと行動してた時に通った時はぴったりと閉じていて、子供にも分かりやすく立ち入り禁止の術が掛けられていたそこがほんの少しだけ開いている。

さすがにここは立ち入り禁止だろうなと躊躇ったエゴくんだけど、もしかして主催者の子息が許可して入ったのかもしれないと思い少しだけ覗いてみることにする。暗い室内は少しの隙間からでは分からず、明かりもないそこに居るわけないと思いながらもエゴくんは扉に手を掛けてゆっくり開く。

腕があった。赤い絨毯に寝そべるように投げ出された腕が。その先に、折り重なるようにして何かが積まれている。生えたように突き出たつま先から赤い水が滴った。血の匂いの中に焦げたような匂いを嗅ぎ取りエゴくんは呻く。そして無造作に重なる遺体の中に探していた青い色を見た。

そこからは大変な騒ぎで、魔.関署が到着する頃には主催者夫婦を殺す勢いで詰め寄る者、我が子の千切れた体を夢中で掻き集める者、庭にいて無事だった子供を抱いて泣く者など、まさに地獄。状況的には主催者が犯人に一番近いと思われてたんだけど、被害者の中に主催者の子供と思しき肉塊があった事から

断定には至らなかった。
同年代よりしっかりしてるとはいえ、まだ幼いエゴくんの心の傷に配慮してこの事件の記憶を消す(封印の方が近い)ことになるんだけど、その前に彼女の祖父に会いたいというエゴくん本人の希望によりサリ邸に向かう。大変だったねと気遣いの言葉をくれるサおじいちゃんに

「おれが殺したも同然です」って言うエゴくん。一緒に居てやれば助かったかもしれない何か変わったかもしれないなのに婚約者を守る事を放棄した、と自分を責める言葉の中に、ひとつだけ隠した本音が出そうになって詰まる。それを言ってしまおうか、頼んでしまおうか、この人にはそれを実行する権利が

ある。というエゴくんの考えに気付いてるのか、表情を消していたサおじいちゃんが「ダメだよ」と言い聞かせるような声でエゴくんを静かに叱る。「自棄になるには君はまだ幼い…それにあの子は君が大好きだったから、それに手を貸してしまったら嫌われちゃうなあ」と困ったような参ったような笑顔で諭す

サおじいちゃん。今はいない愛孫を、素直じゃないけど本気で想ってくれていた子供に、彼が望んでいる罰の代わりに生きる道を示すおじいちゃん…教育者…。本当は罰を受けたいがために来たのだとバレてしまった上にいぅまちの事を出されたらそれ以上言えなくなるエゴくん。

記憶消去の魔術を施されている間は、妙に物知らずで危なっかしい所やいちいちこちらのペースと冷静さを乱してくる厄介な所、淑やかさとはかけ離れた行動で一緒に木から落ちた思い出や一等眩しい星を追って星座盤を回した思い出が浮かんでは消えていき、そしていぅまちに関する何もかもを忘れる。

『あれはなに?』『あれは…冬の大六角形のひとつだな。ペフェレル大虐殺星の斧の先端についた血に見立てた一等星』『ぶっそうだね』『方角知覚魔術いらずの恒星とも言われている』『ちかく…?こうせい…?』『…迷った時に目印になる』『へー、シリウスみたいだね』『シリウス?』

『おおいぬ座の、いちばん明るい星なんだって!大人のひとにおしえてもらったんだ』『いぬ…』『冬のあいだいちばん明るいから、そこをめざすんだって言ってた』『シリウス…おおいぬの…一番明るい…星』

エゴくんのシリウスはもういない。

エゴくんの中では何かが燻り続けてた。それはエゴくんが成長して大人になっても変わることなく不完全な煙を吐き出していて、なのに火種が何なのかどこを消せばいいのか本人にも分からなかった。でも幼少の夢を見た時、その原因を思い出す。もうどうしようも出来ない遠い所へ逝ってしまった少女を

どうしようもなく大切に思っていた記憶を呼び起こされ、あのヤブ術師め、と己の記憶を封じた筈の術師に悪態を吐きながらも、朝の始まりのルーティンをこなすためにベッドから抜け出す。どんなに夢見が悪くたって仕事を放棄することはできない。エゴくんはもう大人で、先生なのだから。

夢という形で記憶が戻ってしまった先生だけど、何百年も前の、そして幼い頃の記憶なんでショックはあまりない。ただ、遣る瀬のない懐かしさをじわじわと流し込まれるのは慣れなくて、いつもより疲れ気味で就寝する。原因は分かったのだからそれにケリをつけてとっとと忘れてしまおう、と思いながら。

ふと気がつくと何処かの屋敷の中に立っていて、これは夢だなと理解する先生。明晰夢の中には先生以外の大人はおらず、貴族の礼服を身に纏った見目麗しい少年少女が思い思いに楽しんでいる。あの事件の事を夢にまで見るなんて、気付かぬ内に参ってたのかとちょっと自分で自分が心配になる先生。冷静。

すると楽しそうな少年少女の一団が目の前を通り過ぎ、その中に埋もれていた青色が先生の前に飛び出す。先日の夢で見たばかりの青い髪、ドレス、膨らんだ蕾のような柔らかなかんばせ。「おじさんも遊びにきたの?」思い出したばかりの見慣れた顔が、花開くように笑った。

「まずは挨拶。そして目上の者には失礼のない言葉を。家名を背負っている自覚を持て。初対面の者に『おじさん』など論外」そう窘めた先生にハッとして「ごめんなさ…、し、しつれいしました…」と姿勢を正し、たどたどしく挨拶の仕草をする幼いいぅまちに、まあ予想はしていたがと内心で思う先生。

記憶の再現のような夢に来た時点で覚悟はしてたけど、現れた亡き婚約者を前にしても厳しい言葉が出てしまう先生。やっぱり数百年経っても変わらない。いぅまちの幼い挨拶に礼儀正しく挨拶を返すと「なんだかカノレエゴくんみたい」と言われ、まさしく本人なんだがなと心の中で返す。記憶通りなのに

なぜか先生だけは大人の姿だからいぅまちからエゴくんだと認識されてない。そういう所はリアリティのある夢だなと思ってたら「これからみんなでおもしろいもの見にいくんです。いっしょにきませんか?」と言われ、あの時の台詞と同じだと思いながらも設定の細部が妙に凝ってる夢だなと感心する先生。

先生は少し考えた後、ダンスの誘いをするようにいぅまちの手を取って「それよりもっと面白いものを見に行かないか」と小さな手にキスを落とす。絵面だけ見たら犯罪だなという自覚はあるものの、夢であってもあれの二の舞は御免だと、あの時言えなかった誘いを言葉にする。いぅまちは「ほあ…」と

間抜けな声を出した後「こんなかっこいい『おさそい』されたの初めてです!」と屈託のない笑顔を向けてくるから、あの頃も恥じらいなんか捨ててこんな風に誘ってやれば良かったと少し後悔する先生。今更悔いてももうどうにもならないと分かってるけど、割り切れてない部分が少しだけそう思わせる。

そしていぅまちと2人きりで庭園巡りをすることになる先生。あれはどんな作用の植物でどういった用途に使われているか、あの花はいつまで咲いていてどんな環境でどういう色に変化するかなど、齢2桁の悪魔でも分かりやすいよう噛み砕いて説明する先生の言葉にいぅまちはふんふんと興味津々で耳を傾ける。

「先生みたいですね」と零したいぅまちに「教師だからな」と返すと、名前を聞きそびれて呼び方に困っていたのか、先生という呼び方を気に入ったのか、その後何かと「先生」と呼ばれるようになる。いぅまちは先生を気に入ったのか、あっちへ行きましょう!こっちも見ましょう!とあちこち連れ回すから、

子供の無尽蔵の体力に振り回されつつもしっかり付いていく先生。でも、噴水に落ちそうになるいぅまちを掴み上げたり、狭い生垣の間を通り抜けようとしてドレスに枝を引っ掛けそうになったいぅまちを「おい淑女」と呼び止めて阻止したりと、あの頃の苦労を再度体験することになる。そして大きく溜め息を

吐いた先生がいぅまちを呼び寄せて、子供向けにと分かりやすく庭を飾っていたバルーンスタンドに使われていた紫の布と紐を拝借すると、いぅまちの髪をハーフアップで軽く纏めて、そこに紫の布を絡めて大きなリボンのように仕上げる。いぅまちが動くたびにふわふわ揺れるそれを目印代わりにする先生。

庭園にも屋敷内にもちらほらと他の子供達がいて、他の子達とお喋りしながら歩いてたり、一人で庭の片隅に巣を作る虫をじっと観察してたりとそれぞれ過ごしてるんだけど、いぅまちは楽しそうにずっと先生に付いてくる。ありもしないもしもを夢の中で、しかも力のある大人の姿で実現させる虚しさと、

それをせずにはいられない未練がましさを自覚しながらも、幼い婚約者と屋敷の中を巡る先生。こんな夢を見るのも恐らくこれっきりだという諦めもあるせい。何より、主催者一族の歴代当主の肖像画を前に最初は興味なさそうだったいぅまちに、彼らが残した偉大な業績とその影響により続いている業種などを

民衆の営みに絡めて説明すると、ストーリー性があるのが楽しいのか「このひとは何をしたひとですか?」と続きをねだり歴史の知識を吸収しようとする様子に、職業柄かどんどんあれもこれもと詰め込みたくなってしまう先生。軍事用に開発された歴史的武器の元となった無限に無くならない飴の話への

食い付き様が特に凄くて実はこっそり笑ってた。そしてこの会の主催者の肖像画の前で先生の言葉が止まる。あの時はまだ子供で気持ちの整理が上手くいかず、犯人が誰だったのか、どうなったのかを知らない。それでも、外部の者では破れない立ち入り禁止の部屋で行われた凶行からして、状況的に最も疑わ

れたであろうその顔を前に思案する先生。いぅまちの「先生…?」と不安げな言葉に気のない返事をしてようやく動き出す。そして隣に飾られた主催者の子息の肖像画が目に入る。当主になってない…この先もなることはない…少年の絵を見て「随分と親馬鹿だな」と鼻で笑った先生だけど、

記された名前が記憶にあるそれとは違う事に気付き、歩みを止める。随分昔の事を最近思い出したのだから記憶の方が間違ってるのだと考えるも、家名がそもそも歴代のものとは違っている。妙だと思うもののまあ夢だからなと考え直してその場を後にする。

「先生と見てまわるのたのしいです」とスキップでもしそうないぅまちに「はしたない行動は慎むように」と釘を刺す先生だけど、覚えのある大きな扉の前に出ると自然と会話が消える。立ち入り禁止の術は掛かっていない。でも扉はぴたりと閉じている。「先生となら、ここにもたのしいものがあるのかな」

先程とは打って変わって、静かな声でいぅまちが言う。「ない」即答した先生がいぅまちの手を引く。記憶と同じく扉の先の血の海の中に探していた青があるのか確かめる事なく、先生は扉の前を通り過ぎた。

目覚ましより先に目が覚めた先生は、カーテンで遮光された薄暗い部屋の中で、右手の中の感触を確かめるようにゆっくり開いては閉じる。幻を掴んでいたそこからは何のぬくもりも感じられず、夢として現れた己の妄執に苛々と髪を掻き乱した。

精神的に疲れていても先生は粛々と仕事をこなす。通常授業の準備、教材等の手配、理事長からの無茶振り、職員会議に加えて行事の打ち合わせ、理事長の思い付きで増えたイベントの日程調整、理事長から任され(投げられ)た仕事の準備…と余計なものが増えても授業に支障は出さない先生。でも優秀すぎて

更に理事長から仕事振られる。またくっだらない案件だったら今度こそ突き返してやると思いながら目を通す。そこには次年度入学予定の子供の資料が数点。更にめくると別の子供の資料が数人分続く。最後に保護者の調査資料が綴じてある。対象の写真に写っているのは先生と同い年位の男だ。先生はその男に

覚えがあった。正確にはその名前に。青い髪と紫のリボンを揺らして「先生」と呼びかける己の妄執と、既に片手が埋まりそうな逢瀬を繰り返してしまったあの夢の中で。歴代の当主の最端に並ぶ幼い少年の肖像画の下に飾られた、個人名も家名も違う綴り。写真の男は、主催者の子息であるあの少年の面影

どころか、ツノの形も髪の色も違う。それでもあの夢で見た名前と資料の一致が、男と少年を結びつける。「偽名では」先生が男の本来の家名を言うと、理事長の目が薄く開かれる。「…どこまで知っている?」理事長が硬い声で問うた後、「ていうか」と口調を軽くした。「思い出してたんだね。

いつ頃?教員として来た時普通に初対面の感じで挨拶してたよね?いやそもそも学生の時通ってたんだからあの時の初めましてはおかしくない?」といつものペースに戻ったサおじいちゃんに「まあ、最近。初対面に関しては理事長がいち生徒を覚えてるか怪しかったので念のため」「初めましてじゃないよって

言ったじゃん僕!」「はあ、あのクソ…先輩経由で知ったのだとばかり」と先生も普段のテンポに戻る。こんなに小さかった時はあんなに可愛くて分かりやすかったのに…と泣き真似をしながら豆粒程のサイズを作るサおじいちゃんに苛立ちを覚える先生。「ってことは君も犯人の目星が付いてるのか…」と

言うおじいちゃんに、何の事だと先生が目線で返すと、おじいちゃんも首を傾げ返す。「あの貴.族会の事件の犯人のこと」「あれは状況的にも主催者夫婦の犯行では」先生の言葉に「うーん」とおじいちゃんが返す。「そのテの魔術で調べさせたんだけど、彼ら本当にやってないみたいなんだよね。まあ息子も

死んでるし。あと色々と妙っていうか」「妙とは」「遺体をね、一応返してもらったんだけどね」おじいちゃんの言葉に、バラバラに積まれた遺体に埋もれた青い色が先生の脳裏を掠める。「アレ、イノレマくんじゃないんだよね」馬鹿な。そう言い捨てかけた先生の鼻先に、血の匂いに混じる焦げた匂い

が蘇る。「特徴が分からないよう顔を焼かれていたのでしょうが、その判断は早計では」「えっそこまで鮮明に思い出してたの?…トラウマ大丈夫?休暇取る?」おじいちゃんの気遣いに何故かイラッとした先生だけど意識して抑える。「それもあるし、外したら絶対分かるよう仕込んだ首飾りが無かった

のもあるけどさあ、もっと決定的に『違うな』って分かるんだよね。…まあ、そこら辺の理由は元婚約者の君にも内緒なんだけどさ」元婚約者という響きに先生の顔が陰る。例え遺体がいぅまち本人ではなくとも、その後何処かで殺された可能性は高い。現に数百年経った今でも、生きて姿を現した者はいない。

「死んでいるでしょう、流石に」先生の言葉にまあねと返したおじいちゃんが、でもねと続ける「いくつかの遺体が別人だとしたら、犯人は身代わりを立てて無事逃げ果せたのかなって」その可能性はあるが、被害者は皆子供だ。子供があれだけの事件を起こす力も動機も無い。荒唐無稽な話だと首を振る先生。

「あの時、結構な数の使用人が行方不明だったんだけどね」「ならばそいつらでしょう」「うん、でも全員見つかったんだよ。転移魔術で四肢を別々の場所に送られた状態で」「彼らも犯人のターゲットだったか、犯行を目撃されたか、あるいは…」「共犯だったかもね、もう分からない事だけど。

あと、現場の扉って主催者夫婦しか開けられないようになってたみたいだけど…」立ち入り禁止の術が掛けられていた扉のことだ。「あの夫婦、子息にも操作権限与えてたらしくて。他にも色々な魔具を買い与えたり…転移用の魔具とか、魔力増強魔具とか、生体のサイズを操作して持ち運びやすくする

開発禁止指定の魔具なんかも取り寄せてたってさ」話が読めてきた先生。おじいちゃんは主催者の子息を疑っている。「あんな子供が」「と言いたいけどとんでもなく優秀な子だったから、魔力さえ補えば恐らく。…調べれば調べるほどあの主催者夫婦凄くてねえ、年端もいかない我が子に施すにはあまりにも

惨い『教育』をしていたみたいだ。可愛がってはいたみたいだけどね」信じがたい話だと蹴ってしまえばこの話は終わるだろう。しかし、死んだ事になっている主催者の子息が生きているという仮定の話である筈なのに、渡された資料ですら年や家系の能力が一致するというだけで他の根拠も証拠も掴み切れて

いないのに、夢の中の違和感を思い出して確信を得る先生。しかしそれが本当だとしても、死んだ者は帰ってはこない。「弔い合戦でもするつもりですか」嘲笑のような響きだった。死者に執着する愚かさへの。「うん。まだ怒りが収まらなくてね」おじいちゃんの平坦な声が答える。冷えた室温をものともせず

先生は口元を吊り上げる。「私も乗りましょう」奪われて壊されて黙っていられるほど浅い欲ではないのだから。「まあ、犯人かどうか確かめてみないとねー、そうでなくても何か知ってる可能性は高そうだし。あとイノレマくんが生きてるかどうかとか」「はあ?」空気を和らげるように明るい声を出した

おじいちゃんに先生の低い声が被さる。「常日頃から思っていましたがあまりにも楽観的すぎて控えめに言って頭がどうかしておられるのでは」「深く傷付いちゃったから君の給料から慰謝料天引きしておくね」先生の舌打ちが飛ぶ。「才ペラの願いでもあるから。記憶処理を受けず頑張ってきたからねえ…」

彼女が生きてる希望を捨て切れなかったのだろう、勝手知ったるかつての先輩の愚かな一面を知り、先生は表情を険しくする。絶望的な生を希い、いつ折れるとも知らないそれを支えに立ち上がるのは、夢の中で死者に囚われるよりタチが悪い。

「最初は全っ然辿り着けなくてね〜夫妻のきな臭い購入歴は出てくるのに実際は無実判定だしそれを与えられてた子息は行方不明だしね」はあ、と先生が気のない相槌を打つ。「でも孤児院出身の子達の後見人を調査してたらちょ〜っと怪しい噂があってねえ…言えない手段で掘り下げてみたら幼少の経歴の空白

とか魔術とか年齢とか諸々ぴったりでね…ていうか君どうやって調べたの?」はあ、と返した先生が「それよりも」と視線を移す。「何故アンタまでここに…!」「理事長の従者ですので。別に後輩くんを可愛がりに来たとかイノレマ様の『元』婚約者を虐めに来た訳ではないんですええ決して」元を強調し

瞳孔を開くぺらさんの殺気を感じ取った先生がこめかみを押さえる。古き風習で婚約を受けてしまった直後に、この赤い悪魔にのし掛かられ殺されかけた幼少の思い出が蘇る。それ以来目の敵にされ続け、記憶処理した後も知らず再会したこの悪魔におちょくられ続けた記憶が蘇り、頭が痛くなる先生。

そんな2人のやり取りなど気にも留めず「彼すごく顔が広いと言うか『悪いお仲間』が多いみたいでねえ、おかげで何百年も掛かっちゃった」と話すおじいちゃんに「そうですね」とぺらさんが答える。「何百年も待たせてしまったのですから、きっと待ちくたびれて骨しか残ってないかもしれません」

いぅまちの死を覚悟しているぺらさんの発言に意外だと思う先生。「相手がクズ野郎な収集家なら話は別ですが」完全i保管、もしくはそれに準ずる保管系の術。子息の家系と男の共通項のひとつ。高度な技術があれば生物の保管も可能になる。身代わりの遺体とすり替えた見目麗しい子供達を保管し続けて

いる可能性もあり得る。しかし、当時まだ子供であった彼が狂った愛好家のような凶行を犯す動機も、被害者であると同時に証拠と成り得る子供達を生かしておく根拠も見当たらない。だからこそ先生は希望を持たない。喪失感までも追体験する必要はどこにもないのだからと。

新入生の家庭の事前調査という名目で、3人は件の男の屋敷を訪れる。男は自らの資産を使い孤児を保護する施設をいくつも経営しており、養子を欲する者からそれまでの養育費としていくらかの金を受け取りはするものの、運用資産は基本的に男の資産から出ている。また、引き取り手のない子供達には

一般常識や魔術の使い方など生きるために必要な術を教えるなど、非常に『出来た大人』だった。「素晴らしすぎて反吐が出る」「まるで悪魔の皮を被った別の生き物のようですねえ」と吐き捨てていた2人は、屋敷の主人と和かに挨拶を交わすおじいちゃんの後ろで素知らぬ顔をしながらも室内を観察する。

保護という名目で身寄りのない子供を集めて、それを信頼できる(悪事を他言しない利害関係で強固に繋がった)顧客に斡旋し、一応の体裁を整えるために他の子供達には最低限の(偏った)教育を施し、真っ当な環境に置いた数少ない優秀な子供を名門校に入れることによって、目に見える成果を上げながら

魔i関の目を掻い潜る。そんな実態が明るみに出れば、子供を引き取った顧客も、男を多額の資金で援助した者達もただでは済まない。しかし、男の悪い噂を裏付けるための証拠は何処にもなく、おじいちゃん達がこれを公表したところでただの根も葉もない言い掛かりで終わる。男は優秀な悪魔だった。

おじいちゃんやぺらさんがそうと決めて調べ上げなければ、その違和感にすら気付かないほど巧妙で警戒心が強く、そして確たる証拠など残らなかった。男は表の顔も広く、顧客の思い出の品も若さも珍しい生物も可変し続ける鉱石の輝きも、その強力な魔術で保管することを可能にし、同時に彼無しでは

立ち行かないものを築き上げてきた。男には様々な味方が多い。
それでも出て来ぬ証拠を探し求めて、ついには男の本拠地に乗り込む名目を掴んだ。あるかも分からない証拠のため1人の男を追い続けたおじいちゃんとぺらさんのそれも、まさに先生と同じく妄執と呼べるものだった。

応接室に通され、男と挨拶のような形式的なやり取りを交わしていたおじいちゃんと先生だったけど、扉をノックした屋敷の従者によって一時中断される。失礼ながら急用のためと席を立った男と従者が去り、3人だけが応接室に残されると「よし」とおじいちゃんが立ち上がる。あまりにも出来すぎた

タイミングに胡乱な目を向ける先生。上手く行きましたねと言いたげに耳を立てるぺらさん。「今よしとか仰りませんでしたか」「ええ〜、彼の管轄の騒ぎとか爆発とかしらないもーん」と知るはずのない急用の内容を、傍受できない魔術の通信で先生に暴露するおじいちゃん。また違法すれすれな事してる。

「付いてきたからには手伝っていただきますよ」とぺらさんに押し付けられた札に魔力を込めながら扉や窓に貼っていく先生。当分は屋敷の者も主人であるあの男も応接室には辿り着けなくなる。おじいちゃんは廊下近くに立って俯いたまま一言も発しない。意識を集中させて、敷地内の部屋という部屋、

生物や物を隅から隅まで視ている。眼鏡に扮した透視用の魔具を用いてはいるものの、疑似的にその性能以上のことを可能にする魔術の応用力と膨大な魔力に、内心で舌を巻きながらも扉の先の気配を警戒している先生。屋敷に張られた妨害用の結界が反応しないよう行われるスキャン作業は、相当な技術が

ないと出来ない。ふと、おじいちゃんに動きがあった。ゆっくりと顔を上げ、整えられた髭の下の口が動く。「帰ろう」咄嗟にぺらさんがおじいちゃんの前に出る。「直接見て参ります」しかし首を振るおじいちゃん。「これ以上踏み込めばこちらが捕まる。…流石に家族が檻に入れられるのは見たくないしね」

ですが、と食い下がるぺらさんの肩におじいちゃんの手が乗ると、ぺらさんの耳がへたりと下を向く。「…数百年ですよ」「うん」「…残るはここだけです」「うん」「…何も、ですか」「無かったよ。八十、長くても百年…他の子が遺ってないから、きっと無い」黙ってしまったぺらさんをそのままに

おじちゃんが指を鳴らすと、阻害用の札が跡形もなく燃える。それから間を置いて、屋敷の主人である男とその従者が慌ただしく入ってくる。お待たせして申し訳ありませんと謝罪する男におじいちゃんがまた日を改めて新入生家庭の調査に伺う旨を伝えると、ええそうしていただけると助かりますと男は返す。

おじいちゃんと先生と見た事ないほど意気消沈したぺらさんを門まで送った男が「理事長や卿に御足労いただいたのに申し訳ございません」と真摯な謝罪の後に「事態が収まりましたら連絡いたします…このような時に困ったものです」と困ったように笑った男の片側の口端がくっと口内に巻き込まれる。先生は

それに見覚えがあった。少女に繋がれた手の先で、気まずそうにしながらも取り成そうとしていたあの少年の困った笑い方と同じだった。先生の中の確信が深まる。目の前の男と主催者の子息は、やはり同一人物だと。

「手詰まりだ」確信を伝えた先生に、しかしおじいちゃんは硬い声で返す。男の管理する施設等あらゆる所を調べた。そうして満を持して本拠地へ乗り込み、それでも手掛かりひとつない。あるのは疑惑だけ。更にチャンスを作るために使った手段がかなり危うい部類のため、暫く大人しくしなければならない。

「前を向くべき時なのかもね」諦めのようなそれは、おじいちゃんが自分に言い聞かせたというよりは、耳を下げたままの家族の背中を押すためのようだった。
あまりにも遠い思い出の遠い距離から、恒星の光が届く。それは恐らく、幾百年前に消えた星の、最後の輝きだろう。

紫のリボンの先がふわりと弧を描いた。つやつやと丸く光を反射する青い靴がぺたりと床に着く。淑女にしてはあまりにも幼い靴音を立てながら少女が振り返る。「先生?」柔らかい音に脳を固く揺すぶられた気がして、先生は米神を抑える。好奇心に潤んだ青い目が星のように生き生きと瞬くのを見て、

隠すこともせず盛大に舌打ちをする。何故無駄にキラキラしているんだ、もう死んでいるのに。「あーっ、おぎょーぎ悪いんだあ」逢瀬を繰り返す毎にすっかり打ち解けてしまった妄執に窘められる。「先生は大人なのにおぎょーぎ悪くてカノレエゴくんみたい」「はぁ…」菓子の欠片を頬に付けて歩き回る

のは行儀悪くないのか、と言う気力もなくいぅまちの口元を指先で拭ってやる先生。手掛かりが潰され、あの先輩が見た事のないレベルで落ち込み、それを嘲笑えるほど他人事でもない心地でその日を過ごしたというのに、当然のように夢の続きを見てしまう己の頭に本気でカウンセリングを検討する先生。

夢の中では綺麗な庭と楽しい屋敷と穏やかな時間で満たされていて、そこで過ごす子供達の表情はとても明るい。先生は死後の世界を信じてはいないけれど、幼い子供に聞かせる空想の死後の世界そのものだなと逃避気味に思った。「ところで先生!チョコの滝があります!」いぅまちが指差す先には

子供の身長に合わせたチョコフォンデュタワーと各種果物や菓子などがある。無言で立ち上がった先生が、フォークに刺したマシュマロを滴り落ちるチョコに絡ませ、そのままいぅまちの口に滑り込ませる。んふぅと喜びの声を上げるいぅまちを見下ろしながら、先生は珍しく感傷的な表情をする。

「お前はこんな風に現れて何がしたいんだ…いや、俺が、か」夢は己の願望、もしくは意味のない記憶の継ぎ接ぎ。先生の言葉に首を傾げたいぅまちの頭の後ろで、紫が揺れる。もしも、一緒にいたのなら。もしも、目を離さなければ。もしも、素直にその手を取っていれば。もしも、今のように

己の婚約者だと目印を付けていれば。意味のない『もしも』に埋め尽くされる。もしも、本物の彼女が目の前にいたならどうしただろうか。忘れていた記憶が戻った後も、夢を通したからかどこか割り切れないような理不尽と、一歩引いたようなもどかしさが喉元にあった。燻る火種を消すために水で押し流す

ように、燻る想いを踏み消すためには決別が必要なのだと先生は感じた。いぅまちのフォークを持つ手とは反対の小さな手を取る。きょとんと見上げるいぅまちの視線が徐々に下がっていく。跪いた先生はいぅまちの目線より少し高い位置で、いぅまちの指先にキスを贈り、そして頭を下げた。貴族の礼装に

包まれた背中がかろうじていぅまちに見える高さだ。「本気だった」なにが?といぅまちが返す。「本気で俺のせいだと思っていた。そして出来れば、お前と同じ所に送って欲しかった」そうはならなかったがな、と自嘲する先生の言葉をいぅまちは黙って聞いている。「許せとは言わん…むしろお前だけは

許さないでくれ」悪魔が羽の付け根を晒す意味を、この世間知らずで、破天荒で、真っ直ぐで、愛おしい婚約者に教えたのは、先生自身だった。「もう、見つけられそうにない」2人で見上げた記憶の中の星々の輝きが霞む。先生にとってのシリウスの輝きもその残骸も、見つける術はきっとないだろう。

ふわりと先生に何かが覆い被さる。撫で付けても狗耳のように癖がつく先生の頭を、いぅまちが小さな全身で抱き締める。尖った大人の耳にいぅまちの口元が近付く。「あのね、君にだけ教えてあげるね」内緒話のような囁き声が先生の耳に吹き込まれる。「目印があるんだ。僕の首飾りにって大好きな

おじいちゃんがくれたの」ちゃり、と装飾品が揺れる。「迷子になっても見つかるよ、きっと。でも僕がいるのは、暗くて寒くて怖いところだから…」言葉を切ったいぅまちが先生の顔を上げさせ、視線を合わせる。「お迎え、呼んでくれる?」「ああ」エゴくんは即答した。大人の姿である筈なのに、

深い青と目を合わせているのは確かに、いぅまちと対等であり婚約者であるエゴくんだった。
燻る火種に、シリウスの形の光が灯る。

時計の見方は厳粛な婚約者に教えてもらった。コチコチと60回鳴る針が一周すると1分。それを60回で1時間。それが今度は24回で1日。だから60を数える。意識の中に沈みかけながらそれを60回。その60回を24回分。約束まで60を数える。数えて、そして、一瞬だけ、ふと暗闇になる。
首元の右手に力を込めた。

「謝罪だなんて…悪いのはこちらなのに」恐縮する男に先生が、いえ、と返す。先の家庭調査…新入生は孤児であるため施設の経営者への調査だが…は、経営者の男の急用により一時中断となっていた。本来であれば、学校側の立場で訪れた先生が謝る必要などない。そして騒ぎの収拾で忙しいこの男が

応じる余裕などない筈だったが。「こちらの落ち度ですので」先生の言葉に、男は人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。「はは、落ち度だなんて…。それとも、先の不可解な騒ぎの首謀者としてでしょうか?」にこりと笑った目の奥は笑っていない。まあ流石に気付くかと先生は動揺もせず続ける。

「首謀者、と言っていいものか…証拠を残してしまいまして、その弁明にと」へえ、と男が脚を組み、追求する構えに入る。「紫の」先生の言葉に男の指がぴくりと動く。「紫の飾り布を勝手に拝借してしまい。彼女の青い髪に映えるような、飾りを」「なるほど」先生の言葉に被せるように男が声を上げる。

「なるほど、なるほど。異物は、お前のせいか」男の背中から真っ黒な羽が広がり、殺気と魔力が膨れ上がる。先生はそれを見据え、指を組んだまま動かない。「我が楽園を踏み荒らしたのはお前か…!」「アレは私の婚約者ですので」ギラギラと鋭い瞳孔で睨む男に、尚も態度を崩さない先生。男が体を

折り曲げてぶるぶると震える。あああと男の口から意味のない呻きが落とされる。「お前があの時の!無垢な彼女に!私の宝石に!手酷い言葉を吐いた忌まわしい男は!お前か…!」「『私の』とは勘違い甚だしい。貴様には今も昔も、あいつに触れる権利すらない」先生の言葉に男が激情を露わにする。

両親や周囲の大人達への怨嗟を撒き散らしながら、男が自身へ魔術を掛ける。同位階程度の実力までならどんな攻撃にも傷付けられることはない。「あんな冷たい男が子供達を愛し守る教師になるとはなあ!」「親への下らない復讐心を欲と履き違え、ガキ共の成長を奪った貴殿よりはマシということでしょう」

挑発された男の攻撃を不敵に笑った先生がいなす。実力は同程度のように見えるが、生まれ持った魔術の特性上、消耗戦になったら圧倒的に先生が不利だった。男が応接間の壁や床や天井に術を掛ける。逃げ場を奪われた先生は、それでも笑みを崩さない。その時、ビリビリと地を揺らすような衝撃を男だけが

感知した。「保管室が、割れた…?」唖然と呟いた男が動き出して部屋から逃げ出す前に、先生が予め仕掛けておいた術を発動させた。部屋は再び破壊不能となり、元より破壊よりも保管に特化した男の力では壊せなくなる。「この距離では魔術の張り直しもできまい」己の羽を出した本気の状態で先生が

三つ首の使い魔を喚び出し、密度の高い魔力を纏う。「消耗戦だ。私か、貴様の楽園とやらか、どちらかが潰えるまでの」黒いローブを翻し、魔力の塊がバチバチと瞬く。

微かなものだった。流星のようにすぐにでも掻き消えてしまいそうなそれは、たしかに覚えのある悪魔のものだった。あの過保護に詰め込んだ膨大な魔力でも、この距離では再び抑え込まれてしまっていたら追跡は困難を極めただろう。赤い影が振り返ることなく真っ直ぐ跳ぶ。かつての後輩に告げられた

時間とほぼ同時に打ち上がったおじいちゃんの魔力に向かって、ぺらさんの影が闇に消えるように駆ける。その後ろをおじいちゃんがスマホ片手に追いかける。「もしもし僕だけど…うん、事件。……え?いやあ、直接掛けないと揉み消しちゃう悪い子がいるからさあ。えーとね、膨大な魔力反応を感知したんだ

けど、うん、そう、僕の魔力なんだよね。…うーん、未解決の貴族子息女殺害事件の件……ああ、うん、場所はそこからだと…」冷えて澄んだ夜空には雲ひとつなく、星々が惜しげもなくその輝きを晒している。
「冬の斧の先端の、一番明るい、方角魔術要らずの星の方角」
最も明るい星に向かって。

肉体の老いや動きを止める魔術が解けると、少女の体から力が抜けた。『お守り』と大好きな祖父が渡してくれた首飾りの小さな宝石を壊したことにより、蓄えられていた膨大な魔力が放出され、地下施設の認識阻害壁ごと突き破って寒空に打ち上がった。約束通りに出来た、という達成感は一瞬で、肉体を

止めると同時に体を守っていた術が消え去り、少女の体は突き刺すような極寒に晒される。延々と繰り返される心地の良い夢の中で微睡んでいた方がまだ幸せだっただろう。青褪めていく少女の唇はしかし自然と緩んでいた。何の奇跡か、成長した彼の夢を渡り言葉を交わせた僥倖を思えば、永遠の命など

取るに足らないものなのだから。ぼんやりと霞んでいく思考の中で、先生と呼び慕った彼が、優しくて素直じゃない彼だったのだと実感し、微かな笑い声が零れる。夢の中では無意識の感覚でしか分からないのだから仕方がない。暖を求めて自然と体が丸まる。両手で頭の後ろを探り、紫のリボンが夢の中の

物だと思い出し、諦めたように両手が落ちる。寒いのに暑くて、意識までもが落ちそうになる。ああ、また眠っちゃうのかあ。視界から星々が消える。意識が落ちる。
バキバキと何か硬くて分厚い壁をこじ開ける音と、誰かを呼ぶ声がした。かと思うと、暖かい何かに包まれる。少女が目を開けると、

ずっと眠っていたからつい最近の筈なのに何故か懐かしくて堪らない赤い色がいっぱいに広がる。ふわふわな耳とサラサラな髪。そして記憶よりも低くて、聞いたことがない焦った声で、聞き馴染んだ呼び方。「…ぺら、さ、ん…?」掠れて聞き取りにくいだろうに、赤い耳がピンと立ち、優しい視線が向く。

「…遅くなってしまい、申し訳ありません。お迎えに、あがりました」従者であり兄妹である悪魔の言葉に、少女は微笑んだ。数百年前に行方不明となった当時の姿のままで。

魔i関に捕らえられた男は「ただ、期待も何もしない、美しく綺麗なものが欲しかった」と供述した。憔悴し切った無傷の男と対峙していた先生は流石ハイランクと言うべきで、多少の傷はあったものの命に別状はなかった。「私の扱きの賜物ですね」とのたまった赤い悪魔と睨み合う気力はあった様子だった。

いぅまちの他に当時の子息女に加えて、孤児の施設で行方不明もしくは死亡扱いとなっていた子供も収容されていたが、これといった外傷はなかったたために、数百年の時を経て親元へ帰る子供、施設に戻る子供など、それぞれが日常へ戻っていった。施設の運用はおじいちゃんの口添えにより、国から出す

ことが決まったという。
いぅまちと先生は数百年振りに現実世界で顔を合わせた時「ただいま」「…おかえり」という言葉を交わしたのみであったけれど、その後も幼少の頃と同程度の頻度で交流が続いている。スマホを手に入れたいぅまちが先生と毎日やり取りをしていると知ったおじいちゃんが

「アウト!!!!!」とストップかけたり、先生と顔を合わせる度に「婚約は解消済みです」と語尾のように付けるぺらさんがいたりと相変わらず賑やかで騒がしい日々を送っている。ただ、いぅまち本人は婚約についてまだ有効だと思ってるけど、先生はそれには難色を示してる。

「年齢的にも立場的にも厳しい」と険しい顔をする先生に、頬を膨らませるいぅまち。「カノレエゴくんだってコンヤクカイショウはむずかしいって言ってたじゃん」「くん付けはやめろ」「なんで?」「もう同い年でも何でもない」「カノレエゴくんはカノレエゴくんだよ」「はぁ…」眉間の皺を深くして

「お前が大人になる頃にこっちは何歳になってると…」と頭を悩ませる先生に、「いくつになってもきっとかっこいいよ!」とそういう問題じゃないフォローするいぅまち。「だいたい百年二百年も…」と説教モードになる先生に、「え?あっ、ああー…」と気の抜けた横槍をいれるいぅまち。

「…どういう反応だそれは」呆れてる先生にいぅまちは少し考えた後、あのね、と手招きする。「僕の秘密、教えておこうと思って。婚約者だし」怪訝な顔をする先生を屈ませて、先生の大きな革靴の上に子供の丸い靴で乗るいぅまち。「百年も二百年も待たなくても、すぐに大きくなるよ。だって僕は…」

先生には、年下で、幼馴染で、人間で、冬の夜空を導いてくれる一等星のような、そんな婚約者がいる。

数年後には先生の婚約者こといぅまちが入学するんだけど、入学初日に新入生挨拶横取りしてしまったり(おじいちゃんのせい)、ブチ切れた首席と決闘して女子制服でジャーマンスープレックス決めたりと大暴れして、厳粛な先生にめちゃくそ怒られて「退学させてやるからな…!」と脅される。

おじいちゃんに「新入生挨拶してもらうから挨拶考えといてねー」と前日に言われてしまったいぅまち(横取りしてしまったとも思ってもいない)、悩みに悩んだ末に魔フー知恵袋叩きに相談するも、一番最初に来た『禁忌呪文言えば盛り上がると思うよ(笑)』というアドバイスを受けて、カンペに書庫の禁忌呪文

を書き写してきてしまい、流石に愛着湧いた孫が爆散するのを見たくないおじいちゃんとすんごい顔した婚約者にハラハラと見守られながら無事に読み上げ、ぺらさんに魔フー知恵袋叩き相談禁止令(「まず私に相談して下さい」と叱られた)と、スマホのフィルタリングを設定された。

泣く子も黙る怖い厳粛な先生に気軽に挨拶しながら「カノレエゴく…先生!」と口癖みたいにくん付けしてるいぅまち、何かやらかす度に「退学させてやる」と先生に脅されてるけど、退学したら🍲家で花嫁修行と先生直々の教育が待ってるんで、もう少し学校生活謳歌したいからと目立たないように過ごしてる

こちら長身半分以上足悪魔の桃色まつげフルコースでございます。マシュマロmarshmallow-qa.com/mamemmemme?utm…

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  3. 2020/08/16 02:54:47 公開
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