「#鬼滅の刃×歌舞伎のコラボイラス...」、@gaburi54ce さんからのスレッド
#鬼滅の刃×歌舞伎のコラボイラスト、どちらも好きな目線から見ると非常によく考えられていると思うのだけど、解説が何も無いせいで、単純にキャラクターが歌舞伎のお衣装を着させられているだけのコラボ企画と思われている節があるのが非常に勿体ない。もっときちんと紹介した方がいいと思う。
当日の展示会場には解説がつくのだろうけど、現状でこの衣装に納得している鬼滅の刃ファンをあまり見かけないのは惜しい(特に禰豆子)。ファンは見た目だけじゃなく設定にも興味があるはずだし、もう少し解説があれば…。
というわけで、わかる範囲で少し書いてみる。憶測故、公式の設定とずれる可能性がありますが御容赦。
まず、そもそも、歌舞伎の中でもそれほどメジャーとはいえない源頼光と四天王がコラボテーマに選ばれた理由。鬼滅と歌舞伎とは、鬼や蜘蛛を退治するという共通点があるのは公式サイトにもある通り。
そこで、最初に彼らが登場する演目をわかる範囲で書き出してみます。
「土蜘」
「蜘蛛の拍子舞」
「大江山酒呑童子」
「蜘蛛絲梓弦」
「戻橋」
「茨木」
「四天王楓江戸粧」
どれもいい演目だけど、残念ながらかかる回数は少ない。そして、全て演目の主役は敵役側で、源頼光と四天王は脇役。
歌舞伎では、鬼よりも蜘蛛と闘う方の演目が多く上演されるのと、源頼光と四天王の顔ぶれが、義勇さん、炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助で揃えられていることから考えると、今回の衣装はおそらく、那田蜘蛛山編と蜘蛛が出てくる演目のリンクを想定しているのではないかと思います。

それぞれのキャラクターと歌舞伎の元ネタとの比較をしてみます。まず、炭治郎と坂田金時。坂田金時は、童謡にも出てくる金太郎の成長した姿。この衣装は、荒事というジャンルに出てくる、強くて勇猛果敢なヒーローのもの。頭には力強さを表す力紙をつけ、特別な能力を持った存在を現す仁王襷をかけて
います。これは色々な衣装が出てくる歌舞伎の中でも1、2を争うくらいのかっこいいもので、強くて正義感のある主人公にはふさわしい衣装。そして、炭治郎の衣装をよくみると、広げた着物の裾に「滅」の字が入ってますね。役どころの「押戻」も炭治郎にはぴったり。
次に、一番物議を醸している禰豆子の衣装。
渡辺綱は鬼の腕を切り落とした逸話のある人物。禰豆子には女方の華やかな衣装を着せて欲しかったという声も見かけたのだけど、彼女は守られる存在ではなく、自分で鬼と闘うことを選んだ強い人だから、こちらの方がふさわしいと思う。
足を出しているのは、原作で闘う時に足を出しているのに合わせたのではないかと。女だから着物から足を出すのはおかしいという意見は、逆に禰豆子には失礼ではないかという気がします。守られる存在ではなく、闘う側の四天王に禰豆子を入れてくれたのが嬉しい。
卜部季武と碓井貞光はそれぞれ四天王のうちのひとりという以外に特筆することがないのだけど、善逸と伊之助の特性を活かした見得が決まってるので、このふたりのキャラクターのままで歌舞伎の立ち回りやってくれたらさぞかし面白いだろうなあと思います。
義勇さんの源頼光は、金冠をつけた公家の衣装かな。四天王の上司にあたる人物で討伐隊のリーダー。この衣装は上品で格式も高いし義勇さんにぴったり。
歌舞伎の方の写真は2008年博多座の「蜘蛛絲梓弦」から。勘太郎時代の勘九郎。若い。
長々と書いてしまったけど、このコラボに対する反応が、今のところどちらのファン層にもそれほど響いてなくて、世の中に溢れてる鬼滅の刃のコラボのひとつとしか思われてなさそうなのが見てられなくて。
ちゃんと見るとコンセプトしっかりしてそうなのになあ。
最後に、「蜘蛛絲梓弦」大詰めの一場面を。
これは鬼滅の刃ファンにぜひ見て欲しい。那田蜘蛛山編で歌舞伎化するならこの演出ベースでやると思う。というかここしかないと思うしやって欲しい。
#半沢直樹 伊佐山部長の中の人の超人的な身体能力にも注目。
今回この一連のツイートを書くにあたり参照した資料で、「蜘蛛の拍子舞」と「蜘蛛絲梓弦」で押し戻しが違うことに初めて気が付いた。前者が坂田金時で後者は平井保昌。出る人数の関係なのかな。蜘蛛の出る芝居好きなんだけど、四天王側に注目したことがなかったので、今回は自分でも勉強になりました。
ひとつ余談。
鬼滅の刃、那田蜘蛛山編の敵、蜘蛛鬼の名前は「累」と書いて「るい」なんですよね。
今月、猿之助さんが「色彩間苅豆」で演じてたのは「累」と書いて「かさね」だけど、この話の元となった真景累ケ淵の女性の名前は「累」で「るい」と読む。
ちょっと面白い符合。
そう言えば私、鬼舞辻無惨は蜘蛛絲梓弦の早替りのところでやればいいと思ってたんだった。あれなら子供から大人まで、年齢も性別も飛び越えて自由自在に姿を変える鬼舞辻無惨にぴったりだし。てことは、最初から鬼滅四天王の敵方は鬼舞辻無惨の設定でもいけるな…
あとは柱がそれぞれ何の拵えで出てくるか。
しのぶさんはやっぱり胡蝶なのかな。
他は今のところ悲鳴さんが河内山宗俊くらいしか思いつかないけど性格は真逆だしなあ…(盲目という共通点しかない)。宇髄天元様が何着てくるか楽しみだなあ。蜜璃ちゃんは雲の絶間姫とか…?なんだろ
柱の拵えが出たので、ひとつずつ解説を。
娘道成寺は、有名な安珍清姫伝説を元にした舞踊劇。前シテで美しい白拍子が、後シテでは大蛇に化けて鐘に巻き付くというやつ。
蛇柱の伊黒小芭内さんがやる歌舞伎のお役はもうこれしかないですよね。
#鬼滅の刃×歌舞伎
恋柱の甘露寺蜜璃ちゃん扮する阿古屋は、女方の最高峰にして最難関と言われるお役。
見た目の美しさは勿論、愛しい人の行方を詮議されても口を割らない芯の強さと、琴、三味線、胡弓の三曲を弾きこなす難しいお役は、かわいく見えてめちゃくちゃ強いみつりちゃんにぴったりなのでは。胸は出てないけど
胡蝶しのぶさんは藤娘。藤娘は藤の花の精が娘の姿で踊る舞踊劇。しのぶさんと藤の花といえば、もう鬼滅ヲタに解説は不要かと思いますが、歌舞伎ヲタに向けて少し。鬼滅の刃で藤の花は鬼の嫌うものとして描かれていて、しのぶさんは藤の花の毒を精製します。クライマックスではこれがキーとなるのです。
宇髄天元様。四人目の嫁に立候補したい宇髄天元様。髪下ろしただけで何人の女を落としたの天元様。
天元様が扮した不破伴左衛門は「鞘当」という芝居に出てきます。天元様にぴったりな派手着物。それでね、鞘当の舞台は吉原なんですよ奥さん。天元様が原作で大暴れする遊廓が舞台なの。配役天才かよ。
悲鳴嶼さんは勧進帳の弁慶。
悲鳴嶼さんは原作でお坊様という設定になってたかな。お寺で育ち常に数珠を携帯しているのと、弁慶が山伏という修験者に化けて数珠を携帯している姿に共通点が。
勧進帳は少し難しいけど、一度は見ておきたい名作中の名作。
時透無一郎は「御存 鈴ヶ森」の白井権八に扮しています。ここで重要なのは、鈴ヶ森のあらすじには必ず、白井権八は「前髪の美少年」と紹介されているところ。そして剣の遣い手であるところ。強いんすよ白井権八。
前髪の美少年を強調するべく、俳優祭の時の金太郎くん(現染五郎)を持ってきてみました
不死川実弥は「ひらかな盛衰記」に出てくる樋口次郎兼光。逆櫓(さかろ)の段の扮装ですね。
…ということでいま勉強し直してるんだけど、私実はこの演目どうしても寝ちゃうので、実弥さんとの共通点がいまいち掴めてません…。忠義もので家族思いなところかなあ。うーん。ごめんなさい。ギブ。
ラスト、煉獄さん。「義賢最期」の木曽義賢。
私的に、柱の扮装はこれがMVPだと思います。
わかりますかね。
煉獄さんと義賢、顔の血を流してる場所が、同じなんです。
煉獄さんについては映画もこれからだし、まだ原作を読んでない人のために詳細を書くのは控えておきます。
義賢最期の立ち回りがアクロバティックでとても格好良いので見てください。演じるのは黒崎検査官こと片岡愛之助丈です。
以上は、あくまでも素人の拙い知識と憶測で書いたものですので、公式と異なる部分や、読む方の意見と異なるところもあると思いますが、何卒御容赦下さい。
展示会にちゃんとした解説が出ると思うので、私の書いたものはあくまでも参考程度にお願いします。
お目汚し失礼しました。
禰豆子の袴の裾については、松竹衣装さんにこの人が潜り込んでいた可能性があることを付け加えておきます。
歌舞伎クラスタの友達に指摘して頂きました。
悲鳴嶼さんの弁慶の衣装は、勧進帳ではなくて「義経千本桜」の二段目「渡海屋・大物浦」のものでした。
なんで勧進帳じゃなくてここの段から衣装引用したんだろ…。動きやすそうだからかな
不死川実弥さんの樋口次郎兼光、キャラとお役とのリンクわかりました。
兼光は、弟の今井兼平との絆と、主君の木曾義仲への忠義心が厚かったようです。
だめだこれ泣く…。
歌舞伎のあらすじだけではなく、ちゃんと歴史勉強しないとダメですね。
炭治郎の役どころを「押戻」とだけ書いて押戻についての解説を入れるのを忘れてました。
「押戻」は、妖怪や魑魅魍魎を花道から舞台へ押し戻して鎮め退散させるという役割で、クライマックスに登場します。
鬼滅の刃の主役の炭治郎には、これ以上ない配役だと思います。
禰豆子の渡辺綱の衣装、元ネタ判明しました。「戻橋」の渡辺綱の衣装着てます。だから足出してるんですね。すっきりした。
これは渡辺綱がひとりで鬼女の腕を切り落とした伝説を舞踊にしたものですね。
戻橋なんか今ほとんど上演してないもんなー
これはわからんわ。元ネタがマニアックすぎる