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「すれ違い少女漫画なイドアズ♀ ウ...」、@jf_azul_0224 さんからのスレッド

すれ違い少女漫画なイドアズ♀ ウツボ求婚√NO2

ゆらゆらと意識が揺れる。
ああ、目覚めるのだなとすぐにわかった。
現実の自分の身体は重く、目を開くことも億劫だった。
「…………アズール? 目が覚めたんだね」
「リドルさん?」
「ああ。待ってて、先生を呼んでくる」
「いえ、大丈夫です」

アズールは駆け出そうとするリドルを止めて、ベッドの上に起き上がった。
倒れる前よりは少しはマシなのかもしれないが、身を起こすだけでも辛かったが、アズールは身体のあげる悲鳴を無視した。
どうやら保健室には自分たちしかいないらしく、とても静かだ。
「…………たぶん、寝不足のせいなので」

「わかっていたのかい? いろいろ忙しいのかも知れないけれど、睡眠を削るのは感心しないよ」
「……いえ、好きで削っているわけじゃなくて、単に不眠症なんです。最近、うまく眠れなくて……だから、起きている間はちょっとだけ仕事したりして…………それだけです」
「アズール…………」

リドルは呆れた顔をした。
「そんな顔しないでください。まずいな、というのはわかっているので、近いうち自分で睡眠薬を処方するようにします。…………寮長室の鍵を変えてからですけど」
「鍵を変える? どうしてだい?」
「…………今のままだとジェイドとフロイドが好き放題入ってくるので」

「は?」
リドルの可憐な容姿からは想像もつかないような野太い声が出た。
「ちょっと待ってくれないか。彼らは君の部屋に自由に出入りするのかい?」
「ええ。……僕の部屋が女子のエリアにあった時はそんなことはなかったんですけど、僕が寮長になってからは自由に出入りしています」

「…………女性の部屋だぞ?」
「ええ。……でも、仲の良い幼馴染みならおかしなことではないでしょう? カリムさんも言ってました。ジャミルさんは出入り自由だって」
「それは彼が単なる幼馴染みだからじゃなくて、従者でもあるからだ。君達はそういうのと違うだろう?」
「違いますね…………」

「でもまあ、君達は恋人同士でもあるからおかしなことではないのか…………ああ、海では番の関係って言うんだっけ?」
「……違いますよ。僕と彼らは番にはなれません」
「え?」
「陸に居る時は同じ人間形態ですけど、僕はタコの人魚で彼らはウツボなので…………種族が違います」

アズールはただ静かに言った。
「僕らはただの幼馴染みでしかないんです」
「あ、いや、でも、恋人同士ではあるだろう? まあ、恋人だとしても、女性の部屋に自由に出入りするのは許せることじゃない。着替えていることだってあるし、見られたくないことはいっぱいあるだろう?」

リドルの言葉に、アズールは小さく笑った。それは諦めの笑みだった。
「……フロイドは言ったときは反省するんですけど、次も忘れて鍵を壊すし、ジェイドはわかっていても鍵を壊して入ってきます────夜でも安心できません。もしかしたら、眠れないのはそのせいもあるのかもしれません」

「ちょっと待ってくれ、アズール、それはどういうことだい?」
「……鍵を何十回も壊され、二人がかりで結界を壊され、ついには諦めたっていう話ですが…………さすがに睡眠薬を服用するとなると鍵が掛けられないのは困りますから」
「違うよ。────君には、一人になる場所がないじゃないか」

「……二人が両方とも僕の部屋で過ごしたいと思わない日があれば一人ですね。……そういうこともあります。最近、フロイドは僕を避けていて、ジェイドは顔を合わせると嫌みを言うので僕の方がやや避けていましたから、以前より少し多くなっていました」
淡々と言うアズールにリドルは首を横に振った。

「そういうんじゃない。……ねえ、アズール、もしかして君は彼らと恋人同士でいることが辛いんじゃないかい?」
リドルの言葉にアズールは微笑んだ。
「リドルさん、何度も言っていますけど、彼らは幼馴染みですよ?」
同性であるリドルですら目を奪われるような、透き通るような笑みだった。

そして、その瞬間、あることに気付いてリドルは震えた。
(…………いや、まさか…………でも…………)
「ねえ、アズール、それは照れ隠しでも何でもなくて、本当にただの幼馴染みだということかい?」
「…………いつも、そう言っているじゃないですか」
不思議そうにアズールは首を傾げた。

カタンと隣の寝台から小さな音がしたけれど、アズールは気付いていないようだった。
本来なら自分などよりもずっと気配に聡いのに、まだ本調子ではないせいだろう。
「いや、でも、だって、君達……その、身体の関係はあるじゃないか…………」
リドルは頬を赤く染めながら言った。

今だって、その首筋のぎりぎりのところにキスマークがあることにリドルは気付いていた。
眠っているアズールの胸元がちょうど見えてしまったせいだ。
いつも見えるか見えないかの所につけられたキスマークの存在は、同学年の女生徒なら皆が気付いていた。
もちろん、それをつけた相手のこともだ。

「男の人は恋人同士でなくても、抱けるって言うじゃないですか……そういうことなんだと思います」
「いや、でも…………」
「滑稽な話なんですけどね、僕は二人が好きでした。初恋だったんだと思います。だから、最初の夜…………アルコールのせいでおかした過ちではあったんですが、嬉しかった」

ぽつりとアズールは呟いた。
「でも、言われたんです。『幼馴染みだから、ずっと一緒に居よう』って」
「はあっ? 何だい、その言い草は!」
「僕のことを好きだからずっと一緒に居たい、とも言われました、でもそれって、好きだけど幼馴染みで居ようってことなんだと僕は思ったんです」

「ああ、そうだね、そうとってもおかしくないね」
「……それから、二人は、僕を大事だって、好きだって事あるごとに言ってくれました。『幼馴染み』でいればそう言ってくれるんだと思って…………それ以上を望むのは確かにおかしなことだってわかってた────だって、僕らは決して番にはなれない」

だから…………。
「だから、二人は僕を『幼馴染み』って言うのだと。でもね、あの二人の幼馴染みでいるのは結構大変です。面白くなくなったら、それまでですから…………僕は彼らを繋ぎ止めておきたかった。一度知ってしまった優しい手を離すことができなかったんです」

アズールは視線を落としてから、己の手を見る。
かさかさになってしまった手…………満足に食べることもできていないせいだ。
「リドルさん、僕は…………昔、いじめられっ子だったんですよ」
「君が?」
いじめられっ子ではなく、いじめっ子なのでは? と思ったリドルは悪くない。

だって、NRCにおけるアズール・アーシェングロットは明らかにいじめっ子の方に分類される。いや、いじめっ子と言うにも生やさしい…………。
「言っておきますが、その時いじめられたことの仕返しを今しているわけじゃないですよ。いじめられっ子だった過去があるので、過剰防衛の挙げ句、今になった

という気はしなくもありませんが…………」
「…………ひどい過剰防衛もあったもんだね」
ボソリとリドルは思わず本音をもらした。
「ええ、そうなんですけど…………しょうがないじゃないですか、トラウマってなかなか消えないんですよ。だから先手必勝だし、何かされるまえに徹底的にたたきのめして

おかないと安心できない……って思ってしまうんです。あと、『ヤラれる前にヤレ』と『攻撃は最大の防御』っていうのはとても良い生活の知恵です」
「生活の知恵…………」
違うだろう、と言いたいけれど言えなかった。
だって、アズールはそれを本気で言っていたからだ。
「海では弱い者から死んでいく

わかりやすい弱肉強食の世界なんです。なので、いじめられっ子のママだったら僕は今ここに居ません。僕は努力して、今の僕になりました。陸に来て、とても楽しかった…………ああ、いえ、今でも陸の生活は楽しいです。変身薬は合わないし、常時、身体能力に枷をはめられた状態ではありますけど」

「そうなのかい?」
「ええ。……ああ、そうか。蛸壺でひきこもればいいのか」
「アズール?」
「ああ、すいません。本体になって蛸壺に引きこもって結界はって眠れば、フロイドもジェイドも入ってこないな、と気付いたので……」
「ダメだよ、それでは何かあったときに誰も確認できないじゃないか」

「何かって…………」
「君、酷い顔色だよ。…………気付いていなかったけれど、メイクと魔法で随分と誤魔化していたんだね。すごく痩せても居る。食事もちゃんととれていないね?」
「…………ええ。眠れないせいもあってあまり…………でも、ちょうどいいです。僕、元々太りやすい体質なので」

「何がちょうどいいんだい? 随分とガリガリだよ? ヴィル先輩に見られたら、君、連行されるよ。せっかくの美貌が何たること!!ってね」
リドルのあまり似ていない声真似に、アズールは少し笑った。
「でも、ジェイドにはよく揶揄われますから…………少し痩せているくらいでちょうどいいんです」

ダイエットですよ、とアズールは笑った。
ガタッとドアの方から大きな音がして、びくっとアズールが震える。
「……大丈夫だよ。誰も入ってこれないようになっているから。言っておくけど、君の今の状態は痩せているとかそういう話じゃないよ。体調がおかしくなっている点でダイエットじゃないからね」

「でも…………」
「大丈夫。そんなことを言うジェイドの目がおかしいんだよ。次にそんなことを言うヤツがいたら、僕がその目をくりぬいてやるから!」
リドルは本気だった。
いじめられていたという言葉はたぶん本当だろう。長いとは言わないが、それほど短くもない付き合いの中で交わしてきた言葉の

端々や、フロイドの漏らした言葉などからもそれは推測できる。でも、たぶん、今のアズールの心を縛っているのはジェイドの言葉だ…………」
「ねえアズール、ジェイドは女性に対する言葉の使い方がまったくなっちゃいないよ。だから、彼の言うことに囚われる必要なんてないんだよ」

「…………頭ではわかっているんですよ。ジェイドは僕を傷つけて、確認したいだけなんだって。そうやって僕がどこまで許せるかを試してるんです。幼馴染みの僕はどこまで許せばいいんでしょう?わからないんです。僕はジェイドのこともフロイドのことも大好きで、見捨てられるのが怖い…………

文字書き(青鯨ひいな)/成人済(20↑)/読むのは何でもな雑食/主食はイドアズ/イデアズも好き/夢もにょたも好きな雑食
ネタ放流アカウントです。いろいろぶん投げていますのでご注意下さい。
マシュマロ marshmallow-qa.com/jf_azul_0224

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  3. 2020/10/08 18:49:51 公開
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