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「話題の同人誌の知財高裁判決、同...」、@ebisawa_miyuki さんからのスレッド

話題の同人誌の知財高裁判決、同人誌にかかわる方はもちろん、それ以外の方にもかなり面白い判決だと思いますので、簡単にお話ししたいと思います。
わかりやすくするため、いささか正確性に欠ける点もありますがご容赦ください。
ものすごく長文です。

事案はシンプルです。
Xさんが描いた漫画を、Y社がXさんに無断でY社のサイトに掲載しました。そこで、Xさんが著作権侵害を理由に損害賠償を請求した事件です。
ほかと違うのは、Xさんがコミケにも参加する同人作家で、Xさんの漫画が有名なアニメや漫画の設定や登場人物を題材んにした同人漫画なこと。

これは判決分の別表にもまとめられているのですが、Xさんは、たとえば有名な「TIGER&BUNNY」や「刀剣乱舞」「おそ松さん」などを題材にしたBL漫画を描いています。
ネットで見てみたところ、たとえば「おそ松さん」をテーマにしたものは、6人兄弟や髪型、名前などは同一ですが、絵は印象が違います。

そこで、Y社はこう反論します。
「いやいや、だってXさんの漫画、元ネタのキャラクターをパクッてるじゃん。自分が元ネタの著作権を侵害しときながら、こっちに著作権侵害を主張するとか、おかしくね? 裁判所がこれに手を貸したら、違法な同人誌で金儲けすることを認めちゃうことになるよね」

裁判所はなんといったか?

まず、大前提として、Xさんの漫画はXさんが創作したもので著作物であり、Xさんが著作権者であることを認めました。
Y社はこの点を争ったようですが、Xさんが独自に漫画を描いていることはたしかなので、Xさんの著作権が認められることにはさほど争いはないと考えられます。

で、Y社の反論にはこう返しました。
「Xさんが元ネタのキャラクターをパクってるっていうけどさ、そもそもキャラクターは、具体的なアニメの絵そのものじゃなくて、具体的な絵を超えた、みんなが持ってる抽象的なイメージなわけ。つまりキャラクターは創作的な表現じゃないから、著作物じゃないよね」

ここ、むちゃくちゃわかりにくいですよね。
実は、裁判所がここでいってる「キャラクター」は、みなさんがおそらくイメージされてる「キャラクター」とは違うのではないかと思います。
裁判所がいう「キャラクター」は、その登場人物の絵そのものではなく、背後の設定みたいなものですね。

たとえば、ドラえもんを例にとってみましょう。
ドラえもんの設定は、未来からきた猫型ロボット、耳がない、青い…など。
この設定こそが裁判所のいう「キャラクター」です。
この設定をオリジナルに描いても著作権侵害にならないということですね。
ここは混乱しやすいので、ぜひご注意ください。

さて、裁判所の判断に戻りましょう。
裁判所はXさんの漫画の元ネタがシリーズものである点にも触れています。
シリーズものの漫画の場合、前の漫画と後の漫画はテーマや設定、主要な登場人物は見た目や性格は同一で、後の漫画には新しい展開(ストーリー)が付けられるじゃないですか。

そうすると、後の漫画は前の漫画をもとにこれをアレンジしたもの、難しい言葉でいうと二次的著作物なんです。
二次的著作物は、原作に新たな創作性を加えて創られたものをいいます。
たとえば、ある原曲に新たな伴奏をつけて編曲した場合、その編曲は、原曲をもとかなした二次的著作物です。

この場合、編曲て新たに創作したのは伴奏部分になるので、編曲の独自の著作権はこの伴奏部分に発生します。
原曲の著作権はそのまま行き続けるわけですね。
だかは、編曲の著作権を侵害した場合、侵害されてるのは原曲の著作権か、編曲独自の著作権かを分けて考える必要があります。

裁判所もこの点をとらえ、Y社に対し
「Xさんの漫画が元ネタの著作権を侵害してるっていうなら、元ネタのどのシーンか特定してよ。後のアニメなら、後のアニメ独自の創作的な部分を特定する必要があるよね。これを特定してないY社の主張は不十分でしょ」

このあたりはちょっと傍論感があるかもですね。

裁判所の判断は続きます。

「Xさんの漫画と元ネタを比較したけど、主人公の見た目や服など基本的な設定部分以外は似てないよね。結局、Y社の著作権侵害の主張立証は不十分だよね」

裁判所の判断はいよいよまとめへ突入します。

「Xさんの漫画は元ネタの著作権を侵害してないし、仮に侵害してたとしても基本的な設定部分に限られてて、それ以外の部分はXさん独自の著作権が成立してるよね。どっちにしろ、Xさんが、著作権侵害で損害賠償を請求するのはOK」

このほか、わいせつに関しても判断してますが割愛します。

さてさてここからいえるのはこのあたりかと。

・元ネタの設定(裁判所はこれを「キャラクター」といってます。混乱しやすいのでご注意を!)をパクっても著作権侵害にあたらない。
設定なのか表現なのか非常に微妙な判断なことも多く、表現が似ていれば著作権侵害にあたる可能性もあるのでご注意を。

・元ネタの著作権を侵害している場合でも、自己の著作権侵害を理由に損害賠償を請求することは可能。

面白い判決なのでぜひご一読を。

courts.go.jp/app/files/hanr…

リーディングケースであるポパイ・ネクタイ事件はこちら。

courts.go.jp/app/files/hanr…

先生方、間違いなどご指摘お願いいたします🙇

たくさんの方に読んでいただきありがとうございます。
誤字が多くてすみません🙇

キャラクターについて、やはり勘違いしてる方がいらっしゃるようなので補足を。
裁判所がいっているのは、あくまで、設定(アイデア)は著作物ではないからこれをパクっても著作権侵害にはならない、ということですね。

ここは当たり前で、たとえばキティちゃんの設定(アイデア)は「赤いリボンを付けて洋服を着た猫の女の子」なわけですが、この設定に著作権が発生するとすれば、誰も赤いリボンを付けて洋服を着た猫の女の子を描くことはできなくなるわけです。
それじゃあ文化の発展は阻害されてしまう。

この設定をもとに、皆さんが思い描く「キティちゃん」とは全く別の絵を描けば何の問題もないわけです。
他方「キティちゃん」に似た絵を描けば、それは著作権侵害になり得ます。
著作権侵害かどうかは、あくまで「表現」が似ているかどうかの問題です。

調べていただくとわかりますが、今回問題となった同人漫画の表現(絵)は元ネタの表現(絵)と似ているとはいいがたいかと。
仮に同人漫画が元ネタの絵そのものをパクってれば、当然著作権侵害になり得ます。また、服などちょっと変えたとしても、似ていれば依然著作権侵害になり得ますのでご注意を。

Attorney at Lαw(fashion law)/Fashion Editor 弁護士(69期、第二東京弁護士会、メインはファッションロー)/ファッションエディター・スタイリスト。三村小松山縣 法律事務所。ファッション関係者の法律相談窓口 fashionlaw.tokyo主宰。趣味は釣りと猫。

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  2. 海老澤美幸 ebisawa_miyuki
  3. 2020/10/09 12:49:04 公開
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