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「すれ違い少女漫画なイドアズ♀ ウ...」、@jf_azul_0224 さんからのスレッド

すれ違い少女漫画なイドアズ♀ ウツボ求婚√NO3

どこからか花の匂いがしていた。
(……何の花だろう?)
ぼんやりと考え、でも、すぐにそれが薔薇の香りなのだとわかった。
重い瞼をそろそろと開く。
(…………眩しい)
差し込む光…………ああ、ここは自分の部屋ではないのだ、と気付いた。

ぱちぱちと何度か目をしばばたかせる。
見知らぬ天蓋…………自分の寝台ではなかった。
光が差し込むという時点でオクタヴィネルではなく、空気感からスカラビアでもサバナクローでもなく、イグニハイドでもディアソムニアでもなかった。
(…………たぶん、ポムフィオーレか、ハーツラビュルだ)

だとすれば、おそらくここはハーツラビュルだろう。
薔薇の香りがするだけではどちらかの判別はできない。でも、室内装飾もモチーフから考えるとたぶん間違いない。
(……リドルさんの部屋だ)
二、三年生であれば一人部屋であってもおかしくない。
でも、この広さの部屋は寮長室をおいて他にない。

起き上がったアズールは、室内をぐるりと眺める。
そこここにたくさんの本があるのが、リドルらしいなと思い、どうして自分がここにいるのだろうと考える。
ぼんやりした頭は、直前の記憶が曖昧で事情がよくわからない。
カチャリと音がして、アズールは身構えた。
ペンを手にしようとして、胸元にない

ことに焦ったが、ベットカバーの上にかけられた自分の上着にそのままペンがささっているのが見えて、ぎゅっと握りしめた。
リドルの部屋だから入ってくるのは十中八九リドルだろう。
でも、警戒心は消えることがないし、いつだって心構えは必要だ。
常に最悪の予想をするのがアズールの癖だ。

(だってそうすれば裏切られてもダメージは最小限で済む)
「ああ、アズール、目が覚めたんだね」
入ってきたのはリドルだった。
すでに気楽な室内着姿だ。
「…………リドルさん。あの、迷惑をかけてすいません」
「別に迷惑じゃないよ。具合はどう?」
「よく眠ってしまったみたいで……ここ最近では

一番良いです」
少し身体が軽かった。
万全とは言い難いが、今の体調ならジャケットを重く感じることはないだろう。
「……何か騒がしかったようですが?」
「ああ、うん。ちょっとうちの一年生がやらかしてね」
「入学して一週間しか経ってないのに何をしたんです?」
不思議に思ったアズールは尋ねた

「大食堂のシャンデリアを壊した」
「……どうやって?」
「騒ぎを起こして魔法を使ったらしい。それで…………うちの一年生二人と、入学式の時のイレギュラー? よくわからないあの子と魔獣が関わってて……退学を言い渡されたらしい」
「…………入学一週間ですよ?」
アズールは思わず繰り返した

「うん。…………たった一週間で退学を言い渡されるようなことを引き起こすなんて、正直、驚いている」
「……まあ、ウチのウツボは入学半日足らずでやらかしましたが」
「…………入学式だったね」
「ええ」
「参考までに聞きたいんだけど、あの時はどうやって退学を撤回させたんだい?」

「…………あの時は学園長の弱みも何も握っていませんでしたから、条件を引き出したんです。…………一週間後に全国統一テストがあったじゃないですか」
「ああ…………」
NRCだけでなく、すべてのカレッジの参加する統一テストは全国のカレッジの学力を測る重要な指標となるテストだ。

「あれは三年生は全員参加。他の学年は任意です。一年生は入学したてですからほとんど参加しないですが、参加自体は可能です。なので、僕らは優秀な成績をとってみせますので、フロイドの退学を撤回して欲しいと願いました。優秀さをみせれば多少問題児でも目を瞑ってもらえると思いましたから」

「それで?」
「僕たちは三人とも当時の三年生────今の四年生とまじっても遜色のない成績をとりましたので…………」
「その手はうちの子たちには使えない────どっちも座学はたぶん苦手だし、成績もそれほどよくない」
寮長の権限をもってすれば寮生の成績の開示は可能だ。

「とすれば、あとはシャンデリアの修理…………ですね」
「魔法石か…………」
「ドワーフ鉱山ですね…………」
二人は顔を見合わせる。
「ぱぱっと行って帰ってきましょう」
「いや、君を付き合わせるわけには……」
「リドルさんを一人でなんか行かせられません」
「でも、うちの寮生のことで……」

「別に寮生の為じゃないです。僕は貴女が心配だから一緒に行くだけです。…………いいじゃないですか。友達同士、ちょっとスリリングな夜の散歩としゃれ込みましょうよ」
「アズール、君、体調は?」
「今、最高に良くなりました」
ふふっとアズールは楽しげに笑った。
つられてリドルも笑う。

「ちょーっと待った~~、オレのことも忘れて貰っちゃ困るぜ! オレも行く!!」
バーンと扉を開けてカリムが入ってくる。
その後ろにはふよふゆと魔法の絨毯がたくさんの荷物をのせてついてきていた。
「オレのこと、仲間はずれにしないよな!」
「しませんよ」
「仕方がないね」

三人で顔を見合わせる。
そして誰ともなく笑った。
「では、寮長三人で夜の見回りに行くとしましょうか」
「冒険じゃなくて見回りなのか?」
「建前は大事なんですよ、カリムさん」
アズールはにこやかに笑う。
その曇りのない笑顔にカリムはリドルの方を向いた。
リドルも嬉しそうに小さくうなづく。

「そっか。外出届、書いておいた方がいいか?」
「一応、見回りに行くことだけ文書で届け出しておきましょう」
アズールはふわりとペンを一振りし、用紙を出す。
「夜間外出届? オクタヴィネルにはそんなものがあるのかい?」
「ええ。……人魚の独特の習性などもあるので」
「ああ……なるほど」

「オクタヴィネルのところをハーツラビュルとスカラビアにそれぞれ直してください。で、サインだけして、トレイさんに預けて行きましょうか」
「…………そうだね」
「普段でしたら僕は書かないんですけど、これは保険です」
「保険?」
「転ばぬ先の杖、ってヤツですよ」
アズールは楽しげに笑った。

◆◆◆

「…………アズール、君、本当に大丈夫なのかい?」
「大丈夫です。…………いつもよりずっと身体も軽いんです。よく寝たせいでしょうね」
だって、もう夜ですもんね、と言ってから、アズールはああ、と吐息を呑み込んでから、小さく呟いた。
「今日くらいは帰らなくてもいいですよね……」

「何を言ってるんだい、アズール。…………君はしばらくハーツラビュルに滞在だよ」
「…………は?」
「オレも一緒だぜ」
カリムがにぱっと笑う。
「…………どういうことですか?」
「いや、あんまりにもジェイドがふざけたことを言っているようだから。君を取り上げたんだ」
「は?」

「何もかも君がやらなきゃいけないことなんてないし、そもそもジェイドがオクタヴィネルの寮長について語るのもおかしな話じゃないか────自分が寮長でもないのに」
「…………あの、僕、何かおかしなことを口走りました?」
「いいや。副寮長のくせに君に仕事を押しつけすぎているからさ」

「あ、いえ、ジェイドはよくやってくれています。僕がいろいろ押しつけすぎているくらいです」
「そんなことないよ。だいたい、夜の点呼や見回りなんて、本来、君がやるものじゃないんだ」
「でも…………」
「僕もちょっとした夜のデート気分で二人で回ることはあるけど、そうじゃないんだろう?」

「…………前は、ちょっとした散歩気分で三人で回ったりしたこともありますけど。でも、最近は全部一人でやってましたから」
「それがおかしいのさ。女性だから舐められたくないって気持ちはわかるけど、危ないことだよ?」
「ジェイドもフロイドもついてきてくれないのか?」
カリムが無邪気に問うた

「フロイドとは最近顔を合わせるとケンカになるので避けられていて…………。ジェイドには顔を合わせると嫌みを言われるので聞きたくなくて避けていました」
「…………怠慢だな」
「え?」
「ジェイドの怠慢だ。だって、副寮長なんだから仕事は仕事だろう? それで嫌みを言うなんておかしい」

それに、とカリムは一度区切ってからさらに言葉を続けた。
「アズールが一人で行っているのを知っていて、止めもせず、ついていかないのなら、それは怠慢だ。もしそれでアズールに何かあったら?」
「それは……恨みを買ってるのもわかっていますが、それは僕の自業自得ですし、自己責任ですから」

「違う」
カリムはきっぱりと言って首を横に振る。
「だって、副寮長は寮長の補佐をするんだ。オレは名前だけの寮長みたいなもんだから、ジャミルがほとんどやってくれてる────オレのできないところをジャミルが、ジャミルができないところをオレがしてる。アズールはなまじなんでもできるから

全部自分がやらなきゃって思うのかもしれないけど、違うんだよ。頼って良いし、任せても良いんだ。そのために副寮長がいるんだろ? それに文句を言ったり、嫌みを言うんならクビにして新しい副寮長を選べばいい」
「でも……僕はそいつを信じられないと思う」
アズールは躊躇いながら言った。

こんなことを彼らに話すのはどうだろう、と思いながらも、今なら……リドルとカリムになら話せる気がした。
すると、カリムはいつもの明るい笑顔を浮かべて、何てことない様子で言った。
「仕事を任せるだけの話なんだ、別に信じる必要なんてないだろう?」
アズールは何度も目を瞬かせた。

それからリドルの方を見る。
リドルも大きく目を見開いていた。
「能力が信じられれば、別に性格が合わなくても、人柄や人間性が合わなくても仕事は任せられるだろう?」
「あ、ええ……そうですね。確かに、依頼した仕事ができるのなら人間性や人柄は関係ないですね」
「だろ」
カリムは笑う。

「ぶっちゃけて言えば、オレのことを嫌いでも構わないんだ」
「でも、そういう人が側に居るのはお互いストレスになりませんか?」
「側に居なきゃいいんだ。だって寮長、副寮長がセットでいなきゃいけないなんてことはないんだし、リドルのとこは学年が違うからずっと一緒ってこともないだろう?」

「ああ。だから、ちょっとした隙間を縫って情報交換はコマメにするようにしてる」
「来年になったら副寮長も替わるだろう?」
「そうだね。……たぶん、引き継ぎの意味もこめて一年生から副寮長を選ぶと思う」
「アズールんとこは、モストロのこともあるんだ。尚更、後の学年を選んだ方がいいだろ?」

文字書き(青鯨ひいな)/成人済(20↑)/読むのは何でもな雑食/主食はイドアズ/イデアズも好き/夢もにょたも好きな雑食
ネタ放流アカウントです。いろいろぶん投げていますのでご注意下さい。
マシュマロ marshmallow-qa.com/jf_azul_0224

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  2. ひいな
  3. 2020/10/10 04:00:04 公開
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