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「伊達先生に同意。フランス対ムス...」、@camomille0206 さんからのスレッド

伊達先生に同意。フランス対ムスリムというやや大きすぎるカテゴリーでの二元論に問題を還元しようとすると、多くの現実が見失われるだろう。特に今回は地方コミュニティの疲弊、フランスの学校教育の現場の混迷、そのなかでの教師たちの絶望的な疲弊という問題もある。日本にも同じ問題はあるはずだ。

被害に遭った教師は、学力の低下している生徒たちにも歴史への関心を高めようと、日頃から教科書だけでなく、なまの史料や現在の問題、テレビやネット、教室外での活動などを使って、生徒との討論を可能な限り重視する方針だった。その方法は小さな村の生徒や保護者にもよく知られ尊重されてもきた。

ピカソ、ドーミエから始め、シャルリエブドの漫画で締め括る風刺画の歴史を扱った授業も、行われたのは今回が初めてではない。もう何年も続けられている。そのつど生徒たちににも趣旨を予め伝え、信条の自由への配慮を取ったという。ムスリム系住民も含めて村民はこうした「パティ先生」(被害教師の

名)の授業をユニークなものとは捉えていたにせよ、今回のようなSNSでの攻撃に曝されたことはいちどもなかった。

ひとりのムスリム系の女子生徒の父親が、学校の生徒や保護者、教員たちが目にするSNSにパティ氏の授業方法をグロテスクに誇張し、攻撃をおこなった。それは何日も、受け取った別の生徒の母の証言によると朝も晩も「ほんとうに際限もなく繰り返し」送信されたという。教師のヘイト発言や差別的な行為

が詳細に書かれていたが、娘はその授業時間は帰宅して出席していない。「いったいどこからあの父は教室の出来事を知ったというのか」と、別の保護者は訝しい思いをしたという。小さな村の学校で起こったわずからな誤解と感情の行き違いがSNSにより大きな憎悪の嵐となり、教師は無惨に殺された。

むろん当然ながら、ムスリムに対する恒常的な差別という社会の実態がなければこうした事件は起こりえなかった。それは重い事実である。しかしリヨンという大都市の大学で高等教育を受け、小さな村の学校に赴任し、そこで数十年間教え続けることを選択した社会科の教師の一生がこうした形で閉じられたこ

とに痛みを覚える。村の中学生たちがこれからどんな未来を抱えていくのかも。SNSで小さな憎悪を流した父とその娘のこれからにも心が痛む。

形は違うが、今回のフランスの事件で思いだしたことがある。2014年、センター試験世界史Bで「強制連行」が出題された際、「つくる会」など国内の一部が強い批判の声を挙げ「出題者の名前を公開せよ」と迫った。自分はその際に別科目のセンター試験作問委員だったが、右翼の街宣車が何度もセンター周辺

を大音量で軍歌を流しながら徘徊し、世界史委員会への糾弾の声を挙げていた。もし中学や高校の歴史教師が授業で強制連行の問題を取り上げ、それに保護者が同様にSNSでデマを流し、同様の凶行が日本の中小都市や村で起こったら?

そう考えると、この問題はフランスの特殊な文脈のなかにのみ発生した事件とみなしうるだろうか。少なくとも自分にはそうは思えない。日本にも形を変えてありうるのだ。日韓の緊張が高まるたびに、朝鮮学校の女子生徒たちが制服を見知らぬ者たちによって切られるという事件が何度も発生したこの国では。

逸見龍生。大学教員。18世紀フランス文学・思想。リヨン高等師範学校古典思想史研究所招聘教授。逸見龍生・小関武史編『百科全書の時空―典拠・生成・転位―』(法政大学出版局、2018)Dix-huitièmiste. Diderot et l'Encyclopédie. Opinions are my own.

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  2. Hemmi Tatsuo
  3. 2020/10/19 07:30:20 公開
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