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「#王子騎士暗殺者 小国は大国の属...」、@room221a さんからのスレッド

#王子騎士暗殺者
小国は大国の属国とされた。山の谷間に広がる温暖な盆地に、小国はひっそりと在った。頭上は翼竜に、裾野は水竜に護られし禁域であったが、神力を持つと言われる竜を捕らえ兵力増強を目論む大国の皇帝が、そうとは知らずに侵略してきたのである。

この地を諍いの血で穢してはならぬ。古来より語り継がれる伝承により、無血入城を果たした大帝は、宴の席で「属国の印として小国の王子を寄越せ」と言い放つ。動揺する王や后、家臣らを抑え凛々しい若者が「それでこの地に、民に、安寧を得られますならば」と大帝に膝を屈してみせた。

白銀の髪に菫の瞳。春の木漏れ日のようなやわらかな美貌に、大帝は満足気に頷いてみせた。隣に控えし騎士らしき鎧の青年が、言葉を発しかけ躊躇い、口惜しそうに唇を噛む。二国間での取り決めは大まかに決められ、後日細部を詰めるということで大国の兵らは小国を去った。

後日、裾に菫の刺繍を散らした純白の花嫁衣装が大国から贈られてきた。王子の「輿入れ」は半年後に決まった。翼竜に数人の護衛騎士を従え、小国の者たちは大国へ飛び立つ。大帝の望む翼竜と王子を引き渡すために。歓迎の宴は盛大に行われた。翼竜の扱いは長けた者でなくては滅びを招く。

騎士らもそのまま、大国で暮らすこととなる。白銀の鎧を身に纏った彼らと彼らの国を、大国では「白銀国」と呼んだ。大帝は、まるで美姫を侍らせたかのように御満悦である。その手は嫌らしく白銀の髪を梳き、純白の衣の裾を割る。だが騎士らは不動であった。

明け方近くともなれば、酔客もひとりまたひとりと宴をあとにする。大帝の傍近くには将軍らが集い、軍功話に花を咲かせていたが、それももう終わりに近づいてきていた。大帝が花嫁衣装を身に纏った青年の手を取り立ち上がったからである。にやつく男たち。だが、下卑た声をあげないのは流石と言えた。

大帝の不興を買えば文字通り首が飛ぶ。恭しく連れられる「花嫁」に、小国の護衛が二人付き従った。大国の護衛とは異なり帯剣は許されておらず、ただ身を盾とするよりほかないのだが、それでも自国の未来を見届けるつもりなのだろう。大帝の私室の前までは行けずとも、許される限り近くで彼らは待った。

やがて夜が明け、大帝が閨にて菫の君に楔を打ち込み愉悦に浸っていたところを、白銀の鎧を真紅に染めた男が大剣を手に踏み込む。避けようとしても、楔は抜けない。菫の君が、逃すまいと抑え込んでいる。「なにを!! 貴様、気でも違ったか!?」叫ぶ大抵に騎士装束の青年は無情に剣を突き立てた。

「弱者と侮った貴様の不徳」。心の臟を貫いた剣を引き抜くと、薄く笑んで勢い良く首を斬り飛ばした。「我が君」と嘆息する菫の君を助け、衣装箪笥を漁ると、適当な衣を渡してやるが彼の者は恭しく膝を折るばかり。「身を穢さずとも、お前なら時間は稼げたろうに」と言えば菫の君は首を横に振った。

「欲に目が眩んだ男ほど愚かなものはありますまい」「お前を身代わりにするなど、我は……」「後悔されなさるな。我が君のためならば、どれほど身を穢しても我が本望」菫の君は、乳兄弟として王子と共に育った騎士であり、機転を利かせて王子に成り代わった。王子は騎士として、また暗殺者として大国に

潜入を果たし大帝を討ったのである。王子らは飛竜と共に大国を去った。その後に、小国を侵そうとする国は無かったとのことである。

王子が騎士で暗殺者。

一次創作と読書と文具。アルコールを嗜む年齢。探偵、推理、FT、SF、BL。 空想と現実は別次元。作品と書き手の人格及び思想は無関係。妄想は脳内と電子の海の中、紙上のみと御理解下さい。作品や発言に性的な表現が含まれます。アイコンはてんつぶ @tentubu5656 様、ヘッダーは おもちもんち @l3_imxa

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  2. 荊汀森栖
  3. 2020/11/07 23:11:29 公開
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