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「お金をばら撒いて沢山の貧乏人が...」、@nekozukin9 さんからのスレッド

お金をばら撒いて沢山の貧乏人が必死で拾うのを眺めて大笑いしていたところ、ふと見るとお金拾いに参加せずまっすぐこちらを見据えて立っている数人の少年少女がいて、「おい…お前たちは拾わないのか?金だぞ?ん?」と聞いたら「おれたちは尊厳まで売り払う気はない」なんて言うから僕はムキになって

「き、綺麗事を言うな!貧乏人の分際でなにが尊厳だほら見ろ、貴様らは見たこともない額の金だ…何でも買えるぞ、暖かい家にだって住める!飢えることもない!ホラ拾え!僕の前で拾って見せろ貴様ら!」と喚いて僕はお金をばら撒くも彼らは見向きもせず僕をまるで哀れなものを見るかのような眼差しで

見据えてくる。ここで激昂しこいつらを叩き殺したところで、誰も咎めるものはいない。僕は権力者で大金持ちなのだから。しかしこのガキどもは尊厳に殉じ、僕はこいつら最底辺の貧乏人ごときを屈服させることのできなかった敗北者として心に汚点を残し続けることになる。僕はこいつらに手出しできない。

その尊厳を奴ら自身に否定させなければ。地べたに落ちた金を拾わせなければ僕に勝ちはないのだ。僕は唇を噛み締めながら敗北感を胸にその場を去るしかなかった。腹立ち紛れに、今も金を争いながら拾い続けている男を蹴飛ばした。溜飲は微かにすらも下がらなかった。

それからは、あらゆることが手につかなかった。サラリーマンに金で会社の機密情報を喋らせても恋人自慢の男に金で恋人を売らせてもデスゲームを開催して何人もの人間の尊厳を貶めても、その都度あのガキどもの顔がチラつき、人間の弱さを露呈させ楽しむ僕の露悪趣味が、全く、全然、まるで楽しめない。

「ガキめ…」
5時間続けたら50万あげるという契約で肛門にキュウリを入れて裸踊りをしている人間たちを冷めた気持ちで眺めていた僕は、苛立ち紛れの自分の言葉にハッとした。
そうだ、奴らがあんなに頑なにいられたのはまさしくガキだからだ。あれは幼さゆえの、世界を、社会を知らぬただの純粋さだ。

それに加えて、生まれたときからあいつらは貧しく、それが当たり前なのである。あいつらは、金のありがたみを知らない。金があるというだけでどれだけの自由と恩恵が手に入るのかをろくに知らぬからこそ、あんなにも純粋でいられたのだ。
僕はほくそ笑んだ。では、奴らがそれを知ったなら!

僕は部下に命じ大急ぎで児童養護施設を建設させ、あの辺りのガキどもをまとめて収容させた。
不幸を知るには、まず幸福を知ることだ。雨風をしのげる家、暖かいパンとスープ。記念日にはプレゼント。僕は足繁く施設に通い、突然の豊かな生活に困惑しているガキどもを愉快な気持ちで眺めた。

そこにはあの日のガキどももいた。施設に訪れた僕の顔を見つけて、面食らった表情を浮かべている。
くくく。
さぁ、豊かな生活を送るがいい。金のありがたみを教えてやる。そして、それからまた貧しい暮らしにぶち込んで、今度こそ金を拾わせてやるからな。
僕は笑いが止まらなかった。

友人知人、知らない人間にまで、散々な言われようだった。悪虐非道の街の支配者が突然ボランティアを始めた。裏があるに違いない。そうでないなら歳をとって急に地獄行きが怖くなったか。ロイコクロリディウムに寄生されたか、など。
だがまぁ、僕には目的がある。他人の評価などどうでもいいことだ。

与えられるだけの暮らしではお金のありがたみへの理解度が足りないのではないかと思い、施設に教師を雇い入れ、とりわけ基本的な経済観念の教育をジャリどもに植え付けることにした。金が経済をどう回し、どうやってこの暮らしが維持できているのか。それを知れば、きっと金への執着が生まれるだろう。

そんな生活が一年ほど続き、いつの間にか僕はジャリどもから「お父さん」と呼ばれるようになっていた。
なるほど、僕も駆け出しの頃はファミリー、ファーザー、ブラザーなどと組織内で擬似家族を形成し絆を育む文化の中で暮らしてきたからよくわかる。要するに金を生む僕へのおべっかというやつだ。

いい傾向だ。つまりそれはこの生活を失いたくないという執着のあらわれである。執着は欲であり、それを手にする為に人は何でもするようになる。そう、ばら撒かれた金を地べたに這いつくばり、争いながらかき集めるように。
欲を知り、求め、それを尊厳と天秤に乗せるのだ。

クリスマス・イブを翌日に控え、パーティの準備を手伝っていたところ偶然にもあの日の少年と2人きりになった。
僕はあの日の屈辱を想起して。きっと彼はあの日のあの男がどうしてこんなことになっているのかという困惑から。互いに踏み込みを躊躇するような、気まずい空気がその場に流れていた。

「父さん」
沈黙を破るように、おずおずと彼が口を開いた。
「訊いてもいいかな」
「うん」
「父さんは、あの日の…あの人なんだよね」
「そうだよ」
「何でこんなに変わったの?別人みたいだ」
「色々考えて、心を入れ替えたんだって言ったら信じる?」
僕なら信じないなと思いながら、僕は訊いた。

「信じるよ」
僕の目をまっすぐに見て、少年は即答した。
「今まで父さんがおれたちにしてくれたことは全部本当だから」
騙されやすい性格だなこいつ。わるい宗教やマルチ商法のいいカモになるだろう。
「おれね、夢があるんだ」
「夢?」
「うん。将来の夢」

(ないんじゃがな〜!お前に将来など〜www)
倒置法で内心大笑いしつつ、僕はそれが表情に出ないよう必死にこらえた。
少年は続ける。
「父さんがおれたちに勉強させてくれたおかげで、色んなことがわかるようになったんだ。この家を維持するのがどんなに大変か、とか」
「うん」

「この家を、自分でも守れるようになりたい。沢山勉強して、仕事をして、稼いで…。ずっと家族みんなで楽しく暮らせるようにしたい。それで、そんな場所をくれた父さんに恩返ししたい」
僕はその言葉に胸を打たれた。
貧困の中でその日を生きることしかできなかった彼が、今や未来を見据えている。

そして僕は、

収穫の時期だな

と思った。

これまでの生活の中で、少しでもあのガキどもに情が移らなかったのか、と言われれば僕は「移ったよ」と答える。他人を裏切り、陥れ、その分だけ金と権力を得る生活の中で、始めの動機はともかくこの施設を運営してからの日々は背中に向けられる銃口の存在を忘れていられる、貴重で穏やかな日々だった。

楽しかった。
そう。あの日、ガキどもに飲まされた苦渋を払拭するための日々は、確かに楽しかったのだ。
だがそれは、僕の今日までの生き方を変える理由にはならない。それだけのこと。
僕はこの街の権力者となるため、ブラザーと呼んだ相手もファーザーと呼んだ相手も、みんな始末してきたのだから。

そういう意味では、僕はこの時間違いなく浮かれていた。
背中に銃口を向けられる、そんな当たり前の日々への警戒を怠ってしまう程度には。
クリスマス当日。
僕は注文していた施設のジャリどもへのプレゼントを受け取りに、夜の街を歩いていた。奇しくも、あの日と同じ顔ぶれのガキどもと一緒に。

楽しそうに笑い合いながら僕の前を歩くガキどもの姿を視界に収めつつ、僕は今日までの充分な成果を確信して口角が緩むのを止められなかった。
どいつもこいつも、今の幸せに何の不満もないという顔だ。多くのものを得て、捨てられないものを得て。この暮らしを守るためなら何でもできる。そんな顔だ。

きっと今なら地面にばら撒かれたはした金をも拾うだろう。
金さえあれば失わなくて済むものがあるという現実を、守れるものがあるという真実を、こいつらは知ってしまったのだから。

クリスマスが終わったら。
クリスマスが終わったらやろう。
こいつらに金を拾わせよう。
金を拾わせて…

その後は?

その時、パン、と。
乾いた音がした。

僕はそれが銃声であることも、撃たれたのが僕であることも、即座に理解した。
何しろ聴き慣れた音だ。そして、この街で僕に銃弾を撃ち込みたい動機のある人間なんて山ほどいる。誰がやったかなんてわからなくとも、僕がやられるのは至極当然と言えた。

続けざまに、銃声が響く。
僕の身体に何発もの弾丸がめり込んでいく。
ああ。
こうならないように、普段は警戒していたんだけど。クリスマス気分は怖い。
仕事が仕事だ。僕の仕事は、死ぬことすらも仕事のうちに含まれる。だからそれは仕方ない。
だが、今は。今だけは。
勘弁して欲しかったなぁ。

人が死ぬところは何度も見てきたし、銃弾を食らったこともある。だから「死ぬやつだなこれ」ということが直感的にわかった。
穴だらけのコートから財布やら真っ赤な血やら色々地面に撒き散らして、僕自身も転がった。
ガキどもが血相変えて喚いているが、通行人の悲鳴にかき消されて何も聞こえない。

あのクソガキどもに金を拾わせるため今日まで努力してきたのに全部水の泡だ。
せめてクリスマス明けまで待てなかったのかよ。チキン食ってシャンパン飲んで寝てろよクリスマスくらい。
襲撃犯への不満を心の中で漏らしつつ、僕は嘆息して仰向けに転がった。寒い。

「父さん!父さん!」
「やだよ、お父さん、死んじゃやだよ」
「誰か、誰か助けて!」

ガキどもの何か口々に叫んでいる声が聴こえたが、もう殆ど何を言っているのかよくわからなかった。段々視界も薄ぼんやりと霞んでいる。
しかし何ともまぁ、運のいいガキどもだ。誰も巻き添えを食った様子がない。

おまけに、知らず知らず僕の企みからもまんまと逃げおおせやがった。
もしかしたらサンタクロースは本当にいるのかもしれない。これが子供たちへのプレゼント、というわけだ。
僕へのプレゼントは銃弾だったみたいだが。
来世があれば、多少は善行を積んでみよう。神父に賄賂でも掴ませればいいかな。

「父さ……!…!…ぐ、医者…見せ……!」
「でも……わた……お金…持っ…な…!」
「あ……!」

僕の身体に縋り付いていたガキどもが離れていった。
重かったのでよかった、と思いながら、僕はふと奴らが向かっていった先を見た。

「あ」

そこに、僕が見たくてたまらなかった光景があった。

あのガキどもが、必死の形相で、目に涙さえ浮かべながら、地べたを這うように金を拾っていた。
さっき僕が落として地面に散らばった金だ。
やつらは泥と雪が混ざってぐちゃぐちゃになった地面で服が汚れるのにも構わず、一心不乱に、金を拾っている。
「ははは」
掠れた笑い声が僕の喉から漏れた。

「あははは、はは、ははははは‼︎」
可笑しくて仕方なかった。もはや途切れ途切れの呼吸しかできなかったが、それでも僕は可笑しくて、ひたすらに笑い続けた。
見ろよ、あのガキどものみっともない姿を。
あの日、尊厳のために金を拾うことを拒否したあいつらが、どうだ!浅ましく金を拾っているぞ!

不健全な絵や漫画を描いたり描かなかったりする18禁なアカウントです。 【Skeb】 skeb.jp/@nekozukin9
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  2. 猫頭巾
  3. 2020/12/23 08:17:24 公開
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