シェア

「アズくんと愉快なおともだち その...」、@jf_azul_0224 さんからのスレッド

アズくんと愉快なおともだち その1

片割れの腕の中に天使がいた。
最愛の未来の番(ただし、今は片思い中)に良く似たふわふわの銀の髪の天使は、すやすやと健やかな寝息をたてている。
それは見ているだけで幸せになれる光景だった

「ジェイド~~、帰ってきた~~、これ、アズールだから!!」

はい、と僕の腕に無造作に天使を抱かせたフロイドは、ドサリと自分のベッドに身体を投げ出した。
「つ~か~れ~た~」
「いったい、何があったんですか?」
僕は腕の中でもぞもぞとする天使を潰さぬようそっと抱きしめる。
ややして最適の位置を定めた天使は再びすやすやと寝息をたてはじめた。

「アズールが一人だったときに雑魚が襲撃があって、で、そいつらのユニーク魔法が同時がけされちゃったらしい」
「同時がけ?」
「そう~。『相手の武器を無力化する魔法』と『時間を五秒だけ巻き戻す魔法』と『相手の魔力を吸い取る魔法』だったかな……?」
「それ、成功したんですか?」

「たぶん、してない。魔力を吸い取る魔法使ったヤツはアズールの魔力量が想定外だったらしくて、ユニーク魔法使った瞬間に気絶したらしくて制御を失って、他の二人の魔法も巻き込んで大爆発」
「それで?」
爆発の後にはそのちっこいアズールとユニーク魔法の暴走で死にかけた雑魚三人がいたんだって」

「……その説明は誰から?」
「イシダイせんせ。………校内カメラの確認済」
「じゃあ、本当にこの天使はアズールなんですか?」
「アズールだよ……ただし、オレらのことを知らない年齢の、ね」
仰向けになたフロイドはどこか薄昏い表情で天井を見つめて言った。
「僕らを知らない、アズール……」

ジェイドにはまだその言葉の意味は何もわかっていなかった。
想像もつかなかったと言ってもいい。
ただ、『自分を知らないアズール』というその言葉はひどく不吉で寒々しく聞こえた。

◆◆◆◆◆

うわあああああぁぁぁん。
その日、ジェイドとフロイドの目覚ましは幼児の泣き声だった。
「あずーる?」
飛び起きたフロイドはジェイドの方を確認し、ジェイドと寝たはずの幼児の姿がないことに気付くと泣き声の元に駆けつけた。
トイレで大泣きしている幼児は粗相をした様子はない。

「どうしたの? アズール。何か困ったことあったの?」
ぺったりと床に座り込んだアズールは、ぐしゅぐしゅ泣きながら顔をあげた。
「あずーる!! それ、どうしたの?」
床にほとんど尻をつけそうなほど腰を落としたヤンキー座りのフロイドが驚きの声をあげると、アズールはびくっとして泣き止んだ

アズールのおでこは真っ赤だった。
「おててをあらおうとして…………」
アズールの目は閉じられた便器の蓋を見、それから、かたわらの洗面台を見る。
「……もしかして、これにのぼって手を洗おうとした?」
こくん、とアズールはうなづいた。
「それで、手を伸ばしておっこちておでこ打った?」

こくん、と再度アズールはうなづいた。
両手で腫れたおでこをおさえうるうると目を潤ませている様子は大変かわいそうで見る者の心をぎゅっと締め付けたが、同時にこの世のものとは思えぬほど愛らしかった。
「気付かなくてごめんね、アズール。ほら、いたいのいたいの飛んでいけ~、だ」

フロイドは咄嗟に手にしていたマジカルペンを使って、簡単な治癒魔法をかけた。
文字通り痛くなくなったのだろう。ポカン、としている。
「まほう?」
「うん。そうだよ」
「おにーちゃん、まほうつかいなの?」
「おにーちゃんじゃないよ、フロイドだよ、アズール」
「ふろいど?」

「うん」
それから、アズールはフロイドの背後にでくの坊のように突っ立っているジェイドの方を見た。
「……そっちのおにーちゃんは?」
「ジェイドです、アズール」
はっと我に返ったジェイドは跪いて答えた。
「じぇいど」
幼いアズールの唇で紡がれる自分たちの名前は特別な響きに聞こえた。

◆◆◆◆◆

朝食は寮長室の簡易キッチンでとることにした。
「アズールは、今、何歳ですか?」
「あずは、ごさいです」
小さなひとでのように指を開いて五を示すアズールは五歳児とは思えないほどに聡明だった。
親馬鹿ならぬアズール馬鹿が入っているかもしれないが、言葉がとてもしっかりしている。

「アズールは自分がタコの人魚だってわかってる?」
「はい!」
「なんでここにいるかはわかりますか?」
「がっこうだから!」
二人は交互にいろいろな質問を重ねて行く。
五歳、と言ってはいるものの、それだけではない記憶も持っているらしい。
「……じゃあ、オレらのことはわかる?」

あらかたのことを聞き終えたフロイドが、さりげなさを装って問うた。
語尾がわずかに掠れた。
「んーと、おにーちゃんたちが、ふろいどとじぇいどならぼくのウツボです! おっきいぼくがおしえてくれました!」
アズールは元気いっぱいに胸を張って言った。
「ぼくの…………」
「…………ウツボ」

その答えに二人は顔を見合わせた。
「アズール!!」
「アズール!」
両側から抱きつかれたアズールはきょとんとした顔をする。
「おっきいアズールはどうやって教えてくれたの?」
「ゆめのなかで。……えっと、ふろいどとじぇいどはぼくのウツボだからいっしょにいればあんしんですよって!」

ぐっとスプーンを握りしめて宣言する様子はたまらなく可愛らしい。
「そっか~。おきいアズールがそんなこと言ったんだ~」
何だか熱いものがこみあげてきてしまったフロイドは俯いた。
アズールの口から、そんな言葉を聞いたことはない。
そんな風に思ってくれていたことも知らない。

だからフロイドは、これまでの自分の言葉にしなかった努力が……あるいは密やかな献身がこんな形で報われるなんて思ってもみなかった。
(アズール、オレのことを信じてくれてた)
こんな風になったときに頼っていい相手なのだと認められていた────それを知ったことはフロイドに歓喜をもたらした。

思いがけない喜び……それはどうしようもなくフロイドの情緒をかき乱した。
それは、ジェイドも同じだっただろう。
俯いたジェイドの耳元は赤く、ぐすっと鼻をすすった様子はどう見ても自分と同様の状態に違いない。
「ねえ、アズール」
「はいっ」
「オレとジェイドはアズールのウツボだからね。オレ

たちから離れちゃ駄目だよ」
「はい」
アズールは何の意味があるのかわからないが手をあげて元気よくうなづいた。
フロイドは口元についたケチャップをそっとぬぐってやる。
「もし、近くにどっちもいなかったら、オレかジェイドを呼ぶんだよ」
「はい。…………にんぎょごで?」

「ええ。そのほうがいいです」
ジェイドは目を見開き、喜びをあらわにしてうなづく。フロイドもだ。
(見た目が五歳でも、中身にはやっぱり普通のアズールが混ざってる)
正真正銘の五歳児だったならば、陸の共通語はここまで巧みではないだろうし、姿だって人間形態ではないはずだった。

(人魚語っていう選択肢が出てくるのも、ただの幼児じゃないからだ)
幼いアズールの中に見え隠れする十七歳のアズールの姿に二人は喜びを覚える。
この分ならきっとすぐに元に戻るだろう。
目の前の稚魚のアズールは可愛らしいが、可愛いだけのアズールでは二人はきっと飽きてしまう。

それよりも戻ったアズールに稚魚だったときの話をして揶揄いたいし、生き生きと金儲けに勤しむアズールを眺めたり手伝ったりしたい。
「……あー、ジェイドさ~、休み時間とかにイシダイせんせんとこ言って、昨日の続きの話聞いてきて~。代わりに、アズールは今日一日オレが引き受けるから」

「え、ズルいですよ、フロイド。僕もアズールと授業が受けたいです」
「あ~、襲撃者の内の一人、ジェイドと同じクラスなんだよね」
「えー、どうせ謹慎中か反省室ですよね?」
「いや、事情聴取で呼び出されてるか、解除の練習とかさせられてるかも」
「…………解除、できるんです?」

「何がどう作用してこうなってるかわかんないから、無理に解除はさせないって方針にはなってるんだけど、一応、ね。この件のペナルティはアズールが元に戻ったら話し合いってことになってる」
「…………お話し合い、ですか?」
「うん、そうだよ~、ジェイド」
二人は顔を合わせてにんまりと笑った。

その日が来るのが待ち遠しい。
「ふろいど、じぇいど、時間ですよ」
子供用のデザインの制服に身を包んだアズールがぴょこんと立っている。
「はーい。アズール、えら~い。準備万端だね」
「おっきいぼくが、のーとはあとでうつさせてもらうとして、しゅっせきてんをかせぐようにっていってました」

「さすがアズール、こんなことになってもブレないな~」
フロイドはひょいっとアズールを抱き上げた。
「ちょーっと遅れそうだから早歩きするからね」
「はい」
目線が高くなったのが嬉しいのか、アズールが楽しそうに笑った。
フロイドもその笑顔を見たら楽しい気持ちになってくる。

「じぇいど、らんちはいっしょにたべれますか?」
「もちろんですよ、アズール。アズールの分も好きなものを頼んでいいですよ。残ったら僕が食べますからね」
「はい!」
天使と見紛うばかりのアズールの無垢な笑顔に、ジェイドは膝から崩れ落ちそうになるのを必死でこらえた。

◆◆◆

鏡舎から校舎までの道はそれなりに距離がある。
登校ラッシュとも言うべき人波の中、皆が、フロイドに抱えられたアズールを見てぎょっとした顔をしていた。
アズールは突き刺さる視線を気にするでもなく、フロイドの腕の中から、楽しげに周囲を観察している。

「おい、ウツボ共」

「何だよ、クソトド」
背後からかけられた声に、フロイドが立ち止まる。
「…………」
「おはようっす、フロイドくん、ジェイドくん…………アズールくん」
「…………」
にらみ合うフロイドとレオナらを見比べて、アズールは首を傾げる。
「ハッ。ほんとに子どもになっちまったんだな、タコ野郎」

「おまえんとこの寮生のせいだ。この始末どうつけるつもりだよ」
ふんっとフロイドが鼻をならす。
ひんやりとした空気が周囲を満たしはじめたことを周囲に居た者は皆感じていたし、賢い者はさっさと足を進めてその場を離れていた。
好奇心が強い者はさりげなく足を止めて彼らの様子をうかがっている。

「そこまで面倒みきれねえな。当人達に償わせろよ…………なあ、チビすけ」
ひょいとレオナはフロイドの腕の中からアズールの後ろ襟をつまんで掴み上げた。
「…………コバンザメちゃん、てめえ」
「にしし、ちょーっとお話したいだけっすよ。ちょっと借りるだけッス」
ラギーのユニーク魔法だった。

「で、話があ…………」
掴み上げたアズールの顔を覗き込んだレオナは言葉を失った。
安全なフロイドの腕の中から突然見知らぬ男に拉致されたアズール(五歳児)は大きな目を潤ませて今にも泣き出す寸前だった。
「待ったーーーーっ」
「うわああああああぁぁぁん」
それは、同時だった。

人魚の声帯から発せられる超音波の混じった泣き声が高らかに響き渡り、皆が耳を押さえる。
それとほぼ時を同じくしてぽむっという耳慣れない音ともに煙が発生した。
「レオナさんっ」
ラギーが手を伸ばす。
アズールはその手にも恐怖を覚えたのだろう。
「うわああああああぁぁぁん」

さらに高らかに泣き声が響き、再びぽむっという音と煙が発生した。
「アズール!」
「アズール!」
同時に、ラギーのユニーク魔法から解放された二人がアズールに手を伸ばす。
「……ふろいろ………じぇーど…………」
えぐえぐと泣きながら二人に抱きついてきたアズールに二人はほっと安堵した。

フロイドはぎゅっとその身体を抱きしめる。
「……クソトドは?」
「ラギーさんもいませんね」
二人の姿がない。
周囲を見回す……まわりにいた者達が慌てて視線を逸らした。
「…………逃げた?」
「え?」
ラギーの逃げ足は速いが、影も形もない。
周囲に居た人間もえ?というように見回している。

「…………ふろいど」
それに気付いたのはアズールだった。
小さな指先が地面を示す。
「…………え? マジ?」
「何がです?」
「ジェイド、それ、拾って」
「…………何です? これ……ぬいぐるみ? え?」
地面に落ちていたのは、布と綿でできたぬいぐるみとしか思えぬ物体だった。

───ただし、そのぬいぐるみはどういうわけかレオナとラギーにとても良く似ていた。
「……アズのです!」
「あ~、アズール、それ、トドとコバンザメちゃんじゃん?」
良く似ている、じゃない。それがレオナとラギーなのだとフロイドにはわかっていた。
このぬいぐるみから彼らの魔法の気配がする

「フロイド……」
アズールに手を差し出されたジェイドはそのまま地面から拾い上げたぬいぐるみをその手に渡してやった。
アズールは嬉しそうにむぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。
「……よくわかんないけど、トドとコバンザメちゃんだと思う」
「ですよね」
匂いがしますもんね、とジェイドも言った

「あ~……アズール。もしかして、アズール、魔法使った?」
「……わかりません。でも、これはぼくのです」
ぬいぐるみは、アズールの腕の中から出ようともがいている。
「うん。だいじょうぶだよ~、誰もとらないよ。何だったら名前書いておくといいかもね。教室行ったら、ペンを借りようね」

そのフロイドの言葉にぬいぐるみは動きをとめ、それから一拍おいて猛然と抗議をするように「ぬっ、ぬっ」だとか「ぬいぬい」だとかという鳴き声を発した。
「悪ぃけど、自業自得だからおとなしくしといて。また泣かせて、さらにぬいぐるみ延長になったらおまえらだって困るだろうが」

「フロイド、授業は諦めてこのまま一緒にクルーウェル先生のところに行きましょう。さすがにこれは緊急事態でしょう」
「あー、そうだね。…………アズールもそれでいい?」
「だめです!」
フロイドの言葉にすかさずアズールがだめだしをした。
「ぬいっ!」
レオナが信じられないという顔をする。

「アズール?」
「しゅっせきてんをかせぐんです!」
アズールはぐっと手を握りしめる。
「え、あ~……しゅっせきてん……」
「ぬっ、ぬっ、ぬっ!!!!」
「言いたいことは何となくわかるけど、アズールに出席点を諦めさせる対価は高いよ~」
「ぬいっ!!」
「それでもいいってこと?」

ぬいぐるみがどこか必死な様子でうなづいた。
「りょーかい、ジェイド~~」
「アズール、出席点については特別な事情がありますから考慮してもらえます。ですから、先生のところに行きましょう。早く元に戻って、ちゃんと出席した方が良いですし……」
「でも…………」
アズールは躊躇いをみせる。

「それに、フロイドのクラスメイトがマジックをもっているかはわかりませんが、クルーウェル先生のところになら確実にありますから。…………ぬいぐるみにお名前、書くんでしょう?」
「はいっ」
ジェイドの言葉にアズールは晴れやかな笑顔で頷いた。

文字書き(青鯨ひいな)/成人済(20↑)/読むのは何でもな雑食/主食はイドアズ/イデアズも好き/夢もにょたも好きな雑食
ネタ放流アカウントです。いろいろぶん投げていますのでご注意下さい。
マシュマロ marshmallow-qa.com/jf_azul_0224

  1. トップ
  2. ひいな
  3. 2021/01/28 23:09:10 公開
シェア

「すまとめ」はTwitterの長文スレッド(長文スレ)・連続ツイート(連ツイ)を1つの記事にキレイにまとめるサービスです。長文スレの最後に、「@matomesu まとめて」とコメントを付けるだけで、まとめ記事がこのように作成されます。

おすすめスレ