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「アズくんと愉快なおともだち その...」、@jf_azul_0224 さんからのスレッド

アズくんと愉快なおともだち その4

「りどるおにーちゃん! いらっしゃいませ!」
小さな寮長もとい、小さいけれどモストロ支配人なアズくんは、寮生達を魅了した。
アズール本人は決して信じないが、アズールはオクタヴィネルのみならず、ポムフィオーレ基準でも特筆すべき美貌の持ち主である。

口を開きさえしなければ、と嘆いた者も多い。
種族的に美貌で知られる人魚族の中でも、目を見張るような美しさでありながら、アズールほど己の美貌を知らぬ者はいない。
そんなアズールが幼くなったらどうなるか……。
美貌はそのままに、よく回る口もなく、胡散臭さもなく、その狡猾さもない────

「控えめに言っても『天使』ですね!」
ジェイドは、魔法で縮めた寮長仕様の寮服を纏うアズールの姿に目を細める。
途切れることなくスマホのカメラのシャッター音がするのは気のせいではない…………それはすでにジェイドの通常BGMと化しているのまったく気にならなかったけれど。

「やあ、アズール。寮服姿も似合っているね。…………何で半ズボンなんだい?」
「…………じぇいどがぼくのせたけには、ぜったいにはんずぼんです!というから」
アズールはてれてれと照れながら笑って言った。
「ふ~~ん」
リドルは何とも思わなかったが、一緒に来ていたトレイとケイトはもの言いた

げな視線をアズールの背後のジェイドに向ける。
ジェイドは何を言いたいのかわかりません、という顔でにっこりと笑った。
「……よやくせきはこちらです」
リドルの手をとって予約札のある席に案内するアズールを店内の皆が見守っている。
小さな支配人は、その可愛らしさで一目で寮生達を支配した。

のみならず、モストロ・ラウンジを訪問したお客様達を魅了した。
従業員たる寮生達は、小さな支配人が満足げに笑っている顔を見たかったから頑張ったし、客は客で、注文でいっぱいになったテーブルを見る嬉しそうな顔を見たさに財布の紐を緩めた。
「……りどるおにーちゃん、なににしますか?」

リドルにはすっかり懐いたアズールは、ちょこんとリドルの隣に座ってメニューを開く。
「アズールのおすすめは何だい?」
「いちご! いちごのすぺしゃるぷれーとです!」
「じゃあ、それをお願いするよ」
あちらこちらのテーブルのスペシャルプレートを注文する客の声が響く。

今日のモストロ・ラウンジは、期間限定フェアの名の下にメニューが絞られている。
スイーツは走りの苺を使ったものばかりで単価がやや高めだ。
「あのね、りどるおにーちゃんたちにぼくのおともだちをしょうかいしますね」
アズールは傍らに置いていたバスケットをテーブルに置く。
「?????」

それを目にしたフロイドが笑いながらわざとらしく目をそらすのを見て、リドルは首を傾げた。
「…………はい、らぎとれおくんです!」
じゃーんと取り出したぬいぐるみを見たリドルとトレイとケイトは思わず顔を見合わせた。
「ぬいぐるみかい? ラギーとレオナ先輩に良く似ているね」

へえ、と覗き込むリドルの視線の前で、ぬいぐるみは微動だにしない。
ここは心を無にしてぬいぐるみに徹するつもりなのだろう。
「苺のスペシャルプレートの苺の生ジュース添えと苺のスペシャルパフェにダージリン、それから苺のクレープジュゼットに苺のスペシャルドリンク、おまたせ~」

アズールの前にも小さなプレートとドリンクが置かれる。
「金魚ちゃん、アズもここで食べさせてね」
「もちろん。僕らだけ食べるのでは心苦しいからね」
「アズ、トドとコバンザメちゃんは片付けておきな。汚したら困るだろ」
「はーい」
「フロイドはぬいぐるみまでその名で呼ぶのかい?」

「あ~~」
フロイドはどうしたもんだか、と思いつつも、頬をかきながら告げた。
「それ、本人」
「え?」
「どういう作用かはわからんけど、本人だから…………」
「え?」
「ええ?」
トレイとケイトの視線が、いそいそとバスケットに二人をしまい込むアズールの手元を注視する。

「たぶん、アズを泣かせたせいだと思うんだけど、そのへんはよくわからないんだよね」
「サバナクローは寮長不在で大丈夫なのかい?」
「さあ~。イシダイせんせには報告してあるし~」
「…………ああ、報告済なんだね。なら、良かった」
「いや、報告したのに何でアズールの手元に居るんだ?」

トレイが怪訝そうな表情で口を挟む。
「そりゃあアズールが自分の物だって主張するし、とりあげようとすればたぶん泣くし……そうすると、こいつらと同じ目に遭うかもだし…………」
「そうなのか?」
「うん。……こいつら、アズ泣かせたからこうなってんの」
「へえ~~」
リドルはアズールを見た。

絞りたての生ジュースをストローで吸っているアズールは、リドルの視線ににこっと笑った。
リドルも思わず笑みを返す。
幼い子どもに『兄』と呼ばれるくすぐったさや、自分に可愛らしく笑んでくれることの誇らしさにリドルの心は少しだけ舞い上がっていた。
たとえ中身があのアズールであったとしても

今目の前にいるアズは天使だし、自分が守らねばならない存在だった。
この幼いアズを泣かせるのはリドルの本意ではない。
(ラギーとレオナ先輩は自業自得ということで……)
リドルはそう考え、頷いた。納得したのだ。
よって、ラギーとレオナがアズールの手元から救い出されることはなかった。

◆◆◆◆◆

「……何で笑いの発作に襲われてんの~? ハナダイくんとウミガメくん、笑い上戸だったっけ~?」
「ちが、ちがうけど…………」
ケイトは腹を抱えてソファの上に転がっていた。
「だって、あれ。だって…………」
指さした先では、アズールがラギーぬいを実験着に着替えさせている。

「あ~~……しょうがないんだよ。アズに本人入ってるんだよって教えたけど、意味がわかってないみたいで………寮のアズの部屋にはパジャマとかもあるんだよ~。あと、換えのパンツ」
「…………パンツ」
「そう。すげーのあるんだよ~~」
オレとアズで選んだんだ~とにんまり笑う

「まって、まって、下着かえるのは可哀想だから! そこは情けをかけたげようよ!」
ケイトの言葉にフロイドは首を横に振る。
「ダメなの。…………アズががんこでさ~。子どもだから我慢とかしないし、やりたいことやらないと泣きそうになるし…………」
「泣くと、あれ?」
「…………たぶんね」

誰だってぬいぐるみにはなりたくない。
アズールの扱いは子どもにしては丁寧だったし、乱暴でもなかったが、それでもぬいぐるみはぬいぐるみである。
「今日は一緒に寝るって言い張ってて、ジェイドがぬいぐるみ殺人を犯しそうで今から面倒くさいんだよね~」
「ぬいぐるみ殺人…………」

「あれ、中身は普通に綿の手触りなんだけど、どうなってんのかな? あれの首もげたら、本物ももげると思う?」
「恐ろしいこと言うなよ…………」
「ジェイドがマジでやりそうでさ……」
「れおくんもりょーふくにきがえる~?」
「ぬっ!!」
ぬいぐるみは全力で「NO!」をつきつける。

「そうですか~、お着替えですね~」
が、無情にもアズの結論は「着替える」だった。というか、たぶん選択肢はなかった。
「アズール、レオナ先輩は実験気のままでいいんじゃないかな?」
「だめです! おしゃしんとるんだから!!」
リドル達は寮服だし、アズールだって寮服だ。
「あ、そうか」

アズールの言いたいことに気がついたリドルはすぐに納得する。
「えーと……じゃあ、僕も着替えを手伝ってあげるね」
せめてもの情けとして、素早く着替えをさせてあげようとリドルは考えたのだが、ラギーとレオナはすっかり馴染んだ絶望顔を形づくり、思考を放棄していた。
(無理もない………)

トレイは心の底からラギーとレオナに同情したが、半ば面白いと思う気持ちが心の片隅に湧き起こるのをとめることはできなかった。
そう────『人の不幸は蜜の味』という。
確かにその通りで、先人による古の格言は今の状態と
トレイの心境とをぴったりと言い当てていた。

文字書き(青鯨ひいな)/成人済(20↑)/読むのは何でもな雑食/主食はイドアズ/イデアズも好き/夢もにょたも好きな雑食
ネタ放流アカウントです。いろいろぶん投げていますのでご注意下さい。
マシュマロ marshmallow-qa.com/jf_azul_0224

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  2. ひいな
  3. 2021/01/31 18:54:21 公開
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