「せやで。 知ってる範囲だと、(某...」、@Ton_beri さんからのスレッド
せやで。
知ってる範囲だと、(某小惑星探査機)2のエンジンマウント部品が、メーカ見積もり数百万円に対し、20%くらいの金額しか予算確保できず。
開発が下請けに泣きついて何とかしてもらったのとか有名な話やで。
産業技術展で、適切な場所でこの辺の詳しい話を聞ける。
小惑星探査機2は、4つのイオンエンジンを、意図的にわずかに芯を外して、精密にマウントする必要がある。
ただし、宇宙機なので、極めて軽量に作らないといけない。
旧来機は溶接としたが、2tアルミに溶接を行ったので、ゆがみと素材の焼き鈍りが問題となった。
なので次世代機では全切削となった

おおよそ半畳くらいの大きさでアルミ材。
下記のような、わずかに傾いた円形の凸部を4つ有する部品。
アンダーカットなどもあり。
これを切削で製作する。
厚さは2tで。
ばかでしょ?
切削に詳しい人ほど、匙を投げる内容です。
切削時の反りなどは認められず、傷や打痕も認められない。
しかも、3D測定器での各部の寸法検査データ付きで、これを作るのです。
切削に携わっていれば分かりますが、そりゃ、民需で安定している切削メーカであれば、絶対に手を出さない内容です。
こういうのを一品物で作らないといけないのが、航空宇宙の切削屋さんです。しかも一発物で、打ち上げ機と予備機、それから試作程度で5つも作ればおしまい。
あとに仕事が続くわけでも、安定した発注があるわけでもありません。
しかも値切り要請が来るわけです。
開発者
「日産マーチ3台の製作費は払えない。1台で何とかしてくれ」
下請け
「他所で相見積もりしたらいかがです?」
開発者
「他所だと10台と言われた」
シャッチョさんは頭の中のそろばんを引いた
「いいですよ。日産マーチ1台で。でも、試作マウントをウチにください。(小惑星探査機)2の名前と一緒に、展示会で出してよいなら、ウチの宣伝になるのでペイできます」
で開発者はコレに乗った。
こうして儲けにならない価格でものづくりが行われた
宇宙機で良かったな。
軍需だったら絶対無理だぞ。
まぁ、
・今まで仕事してた関係性
・宣伝に使える
・若手に夢を与える
・社員のやる気アップにつながる
・技術開発の投資としてみる
など、仕事以外の打算はあったんだろうね。
だからこそ、7割引きのシール付きでエンジンマウントの開発製造を引き受けたわけだが。
個人で仕事を受けている皆様
「宣伝になるから引き受けて」と言われたら
「小惑星探査機2に乗るレベルの宣伝になります?」
と聞き返すことにしましょう。
切削系の話だと。
小惑星にブチ込んだインパクタあるじゃない?
あれ、柔いC1020の銅をきれいに、球面状に切削加工し、φ300の形状に加工しなければならない。(t5)
そして、ゆがまないように、全周を溶接しないといけない。相手材はSUS304材な。
ばかでしょ?(二度目)
「φ300t5の無酸素銅を、切削で球面に削る(公差0.05mm)」
「それをSUS304の円筒枠にハメ込んで、溶接ゆがみが出ないように溶接する」
気がふれてるだろう?
こっちは推測だけど、切削と溶接で、日産マーチ1台分の金額は出てない。
球面切削で40万円
溶接で40万円
それぞれ出てれば御の字だと思います。この半額もあり得る。これが航空宇宙のモノづくりの世界です。
入らない方が良いよ。
ちなみに。
インパクタは、自己鍛造弾と同じ原理・同じ形状をしています。
これを取りまとめたのは、某ノト製作所(仮名)ですが、他の製品として、機雷を作っている所です。
写真は関係ないけど、対艦ミサイルの弾頭で、自己鍛造弾の形状を持った物の写真です。今回とはなんも関係ないけど。
ちなみに、インパクタの外周は、SUS304で、直径300mm高さ200mmの円錐で厚さは1㎜です。
頑張って削ってくださいね。
単価は20-40万円で。
打痕・傷はご法度です。
切削後、3次元測定器で計測し、結果を報告書に記載して製品と一緒に提出願います。
ばかじゃないの?
で、これにサブミクロン単位で削った、直径300mm厚さ5の球面状の銅を溶接すんの。
t1のSUS304 を、t5の銅に。
φ300mmにハメ込んで。
ゆがみが出ないように。
空孔や割れが出ないように。
インクルージョンは一切ないように。
単価は20-40万円で。
ばかじゃないの?
日本だと
「航空宇宙は金にならない」
「品質ばっかり厳しい」
「メリットは『航空宇宙』とパンフにかけるだけ」
「夢しかない。夢物語ばかり」
と言われる理由の一端は、説明できたと思う。
宣伝文句
「航空宇宙品質なので、高品質で、めっちゃお金がかかるんやで!」
みなせ
「せやろか?」