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「私は優等生の指導法に興味がない...」、@ShinShinohara さんからのスレッド

私は優等生の指導法に興味がない。優等生は自学自習できるし、知識欲も強いので、学習意欲の維持(視線を送り、状況を把握し、「それでいいよ」と承認する)だけ心がけておけば、任せておける。成績優秀でも、それはその子の努力。私の力ではない。だからちょっとつまらない。

優等生じゃない子どもとのつきあいは面白い。子ども一人一人、個性が違う。抱えている課題も違う。適している学習スタイルも違う。それをどう料理するかで腕が鳴るというか。私自身が感じる達成感、自己効力感も大きい。だから、もっぱら、勉学の面でつまづきがちな子の研究が中心になる。

超進学校の教師って、楽しいのかな?と疑問に思うことがある。入学時にすでによりすぐりの成績の子どもたち。放っておいても競い合い、学び合う。お前らなら○○大学くらい合格しなくちゃおかしい、と尻を叩いておきさえすれば学ぶ。もしかして、いちばん教師が楽できる空間なのでは。

成績の悪い子は、いろいろ「呪い」がかかっている。「自分がこうだと思った答えは間違いに違いない」という呪い。だから、「その答えでいい?」と尋ねると、「え?ちょっと待って、違うのかな」と不安になり、あっさり違う答えを選ぶ。つまり、自分の見つけた答えの根拠に自信がまるでない。

勉強の苦手な子は、「大地を踏みしめている」感覚がなく、ぬかるみに足をとられている感覚。問題を出されて答えるとき、あっちかな?こっちかな?と、カンで答えている。フィーリング。そっちのような気がする、というだけ。だから、「大地」まで下りる必要がある。

勉強の苦手な子は、だいたい小学校の算数のどこかでつまづいている。速度とか割合でつまづいているのはまだマシ。分数でつまづいていることが多いし、場合によっては割り算が怪しいことも。面白いことに、九九ができる子がほとんど。うろ覚えなところがあるけれど。

分数でつまづいている子はほぼ間違いなく、「体感」がない。1/3と1/5はどちらが小さいかわからない。何なら5の方が大きい数字だから1/5の方が大きいのでは、と思う。なのに1/5の方が小さいと聞いて混乱する。彼らには分数が、数字と記号の羅列にしか見えていない。

彼らはほぼ間違いなく、ケーキやピザを切った経験がない。食べたことはあっても、他の誰かが切ったものを食べている。自分自身で切らせてもらったことがない。1つのものを3つに分けたり、5つに分けたりする体験なしに、分数を理解するのはほぼ不可能。

だから、分数を理解させるには「体感」させることが大切。チクワやハンペンを三つに切ったり四つに切ったり5つに切ったり。1/3や2/3を体験させる。それらは、1つよりも小さい、ということを、食べながら実感させる。

1/5なら、棒の下の方の数字は「切る数」。チクワを5つに切る、ということ。棒の上の数字は、5つの切った断片の数を示すということを、切ったり食べたりしながら体感させる。

このとき、「分母」とか「分子」なんていう専門用語を使わないようにする。「棒の下の数」「棒の上の数」でいい。勉強に苦手意識を持っている子は、専門用語に恐怖している。何しろ、分母と分子は紛らわしい。なんなら説明する人もよく逆にして使ってしまうことが多い。専門用語は使わないに限る。

棒の下にある数は、切る数。棒の上にある数は、切ったカケラの数。それを何度も何度も体感させ、1/3よりも1/5の方が切った数が多いから、カケラも小さめになるのだ、ということを、自ら切断し、食べてみて、体感から学ばせる。

「棒の下にある数を分母、棒の上にある数を分子、そう名前があるんだが、紛らわしいから忘れちまえ」と通告してかまわない。大切なのは名前を覚えることではなく、棒の下の数字に従って何をし、棒の上の数に従って何をすればよいのかを理解することなのだから。

こうして、体感と結びつくと、分数の感覚が育つ。次第に、2/3とか3/5とかの「応用」にも進むことができる。
分数の割り算は、分数が苦手な子にとって非常に難物だが、これも体感に基づいて理解を進めた方がよい。

「1/2÷1/4=?」
大人からしてみれば、1/4をひっくり返して4をかけ算すればよい、という計算テクニックを知っている。しかし計算テクニックに走ってはいけない。分数の苦手な子は、必ず「体感」に基づいて進める必要がある。

1/2のハンペンと1/4のハンペンを作らせる。大きさを比べさせて、「どちらの方が大きい?」と問う。見たらすぐにわかるから、答えられる。「では、1/2のハンペンは1/4と比べてどのくらい大きい?」と尋ねる。すると、すぐ倍くらい、と、見た目から答えが出てくるだろう。

1/4のハンペン2枚分を並べると、1/2と同じ。
「つまり、『1/2÷1/4=?』という問題は、『1/2のハンペンは1/4のハンペンの何個分ですか?』という聞いているのだ」ということに気づいてもらう。
「では、『1/3÷1/6=?』を言葉に置き換えると?」「1/3のハンペンは、1/6のハンペン何個分、ってこと?」

数式を数式のままでなく、言葉に「翻訳」させる。そして、実際にハンペンを切らせ、大きさを比べ、何個分かを実感させる。こうして、分数の割り算を、計算テクニックではなく、体感に基づいて答えを導かせることを繰り返す。

1/2÷1/4、1/3÷1/6、1/4÷1/8、1/5÷1/10・・・と続けて、体感に基づいて答えを確認していく。2/3や2/5を使った問題も、体感に基づいて答えを導きだしていく。そのうち、子どもはある「法則」があることに自ら気がつく。÷の後ろにある分数をひっくり返してかけ算したのと同じ答えになる・・・?

大切なことは、子ども自身が気づくまで待つこと。大人が先走って教えないこと。ただ、示唆はしてよい。「ここまで計算してきたのをみて、何か気づいたことない?」と問いかける。まだ気づかないなら、体感に基づいた答えの導きを繰り返す。

やがて子どもは、割り算の後ろに分数がある場合、分数を上下ひっくり返してかけ算したら答えが出る、というとんでもない「法則」を発見する。しかし、こうした計算上のテクニックを推奨しない方がよい。あくまで、体感に基づくようにアドバイスする。

すると、「分数は小さいから、小さいもの何個分かを調べるということは、答えが大きくなるんだな、だから分数の割り算は答えが大きくなるんだな」という、体感に基づいた理解ができるようになる。分数の割り算を、体感に基づいた理解に導く。

分数を考えるときは、必ずハンペンを頭の下で切れ!切ったハンペンの大きさを比べろ!ということをしつこく言うと、体感に基づいた式の理解が可能になる。体感に基づいて理解できると、ようやく分数を計算テクニックで処理する地ならしができたことになる。

勉強の苦手な子は、速度や距離、時間の計算も苦手なことが多い。距離÷時間=速度という計算式を、勉強の苦手な子は変にテクニックに走って覚えようとしていることが多い。大阪では「は(速さ)じ(時間)き(距離)」、名古屋では「き(距離)そ(速度)じ(時間)」というように。けれどよく間違う。

速度も「体感」に基づいて考える癖をつけさせる。勉強の苦手な子は、時速100キロがどのくらいか、あいまいなままにしている子が多い。だから、体感に基づいた問いを立てる。「同じ1時間走るとして、速いのと遅いの、どっちのほうが遠くに行ける?」

さすがに、子どもは走ったりの体感を十分に積んでいるから、「速い方が遠くに行ける」と答えられる。「そうや!ほんなら時速2キロは、1時間でどのくらい行けるねん!」というと、速度の問題を体感に基づいて理解できていない子は、答えられない。変に難しく考えて、間違った答えを言うことが多い。

「時速2キロいうんは、1時間で2キロ進めるっちゅうことや。ほんなら問題!時速2キロと時速4キロ、どっちが速い?」こう問うと、勉強の苦手な子は戸惑い、「意地悪問題じゃないか?」と警戒して、すぐ答えないことも多い。

「時速2キロは、1時間で2キロ向こうに行けるねん。時速4キロは、1時間で4キロ行ける。同じ1時間で遠くに行けるのは、速いんか?遅いんか?」と問うと、「速い」と答える。「ほんなら時速2キロと時速4キロはどっちが速い?」「・・・時速4キロ」と答えが出る。

「はじき(きそじ)なんか忘れろ!自分が走ったり車で移動したりしているときのことを思い浮かべろ!」と言って、体感に基づいて速度や距離、時間のことを考えることを徹底させる。同じ距離でも、短い時間で移動できる方が速いことは、子どももわかる。同じ時間でたくさん距離移動する方が速いことも。

体感に基づいて速度を考える癖を、問いかけることで徹底して身に着けさせる。計算上のテクニックに走らない。ひたすら、体感に基づいて距離、時間、速度の関係を実感させる。すると、速度の計算を間違わずに取り組めるようになる。

分数の計算や速度の計算でつまづく子は、私の指導体験では全員、「体感」に基づいていない。計算の時に体感が欠如している。だから、計算式という抽象的なものの操作の前に、徹底して「体感」に基づいた理解を促す。

私のもととには、公立中学最下位クラス(全教科10点以下)の子どもが4人来たが、4人とも分数や速度の計算をマスターし、中学数学もこなせるようになった。高校でもそこそこの成績を出すようになり、一人はトップクラスになって、大学にも進んだ。

その子の「できない」と「できる」の境界線にまで下り、あとは「体感」に基づいた理解を徹底して、「できない」を一つ一つ「できる」に変えていく。そうすれば、膨大な体感的理解が、計算という抽象的な操作も「あ、こうすれば計算さぼれて楽だね。楽だから教えてたのか」と理解できるようになる。

大人は楽な計算法(分数の割り算は逆数にするとか、速度の問題は「はじき」と覚えるとか)を知っているために、子どもにそのらくちんな計算方法を教えてやろうとしてしまう。しかしそうした計算テクニックは、かえって子どもを混乱させ、体感からますます離れた数字の羅列に感じさせてしまう。

計算テクニックは、いったんすべて排除!数字を、計算を、すべて体感に基づいて理解するクセをつける。それを徹底して数をこなしたのち、子どもは自分で気がつく。「なんだ、分数をひっくり返した方が計算が楽じゃないか!」これ、自分で気がつくというのが大切。

人から教えてもらったのではなく、自分が体感に基づいて地道に理解し、その膨大な体験から、一つの法則を「自分で」気がついた、というのは、とても感動が深い。だから忘れない。その感動を、「教える」ことでけがさないようにしたい。

勉強の苦手な子には、体感に基づいた理解を。特に算数は。分数や速度はすぐに計算式に走るのではなく、具体的な体感に基づいた理解を徹底すること。すると、その「ビッグデータ」をもとに、抽象的な計算式も理解できるようになる。

農業研究者。著書は以下
「思考の枠を超える」amzn.to/3iuavIC
「ひらめかない人のためのイノベーションの技法」amzn.to/3kEzoDe
「子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法」amzn.to/31QlNAf
「自分の頭で考えて動く部下の育て方」amzn.to/2FkAKmy

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  2. shinshinohara
  3. 2021/04/05 17:33:13 公開
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