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「20年以上前の話ですが、流死産や...」、@junmurot さんからのスレッド

20年以上前の話ですが、流死産や新生児死亡を経験された女性や家族の相互支援の会があって,お話し会を開いているとの案内をみました.関心のあるひとはだれでも参加可とあったので,申し込んでみました.当時はまだ当事者同士が語りあうピアサポートグループは全国でもめずらしく,関心があったのです

しかし実際に参加してみるとこれがたいへんでした.子どもを亡くした当事者のかたがほとんどの会で,医療者の参加ははじめてだったようです.ひとりひとりが順番に自分の体験を語っていくのですが,当時はまだ流死産や新生児死亡のグリーフケアといった概念が病院には皆無の時代でした.

医者や看護師にこんな心ないことをいわれたとか,こんなつらいことをされたなどのいわばうらみのことばが続出しました.そしてそれがすべてわたしに向けられたのです.お話し会はそのままあたかもわたしをつるし上げる雰囲気に一転してしまいました(苦笑).そういった苦しい思いが蓄積していたのですね

幸か不幸かその場には当時わたしがいた病院で流死産した女性はおらず,わたし自身の話したことや行ったことが問題となったわけではありませんでした.だからこそ多少の理不尽さは感じざるをえなかったのですが,それでも言いわけや反論はせず,責められるたびに申しわけない気持を表明しておりました.

そのときの代表が人間のできたかたで,きちんとフォローをいれてくれましたが,それがなければ懲りて二度とは参加しなかったかもしれません.メンバーのみなも1, 2回そういう経験をすると,医療者の参加も自然に受けいれていきました.いまでは当事者と医療者が協力しあっているところが多いと思います

すくなくともそういった集まりに自分から参加してくる医療者というのは,自分たちの理解者になってくれるひとであり,口はばったいですが,「味方を撃つ」べきでないと気づいたのだろうと思います.

たとえば「足の踏んだ者には,踏まれた者の痛みはわからない」という言いかたがあります.

こうした言いかたは,実際に差別を受けたときの怒りや,無理解に接したときの絶望の表現としてはたしかに意味をもちます.しかしこれが一般的真理となれば,ふつうのひとは自分が無自覚な差別者のごとく思われてひたすらすくみ上がるか,そうでなければ「ああそうですか」と引き下がるしかなくなります

またあるひとたちの話を聞いたり,自分が責められたりしたとき,「自分も知らず知らずのうちに加害者の側にいることがわかりました」という殊勝なことばを聞くことがあります.しかし こういった反省の弁というのは形式的なあいさつとおなじで,えてしてその場限りの表明でおわりがちなものです.

もちろんわたしたちの日常意識のなかに,そういった加害者的な,差別的な価値観が自覚されない構造がかくれているのだから,それを問題としなければいけないという考えかたもじゅうぶんありえます.実際にそのような場面にでくわしたときは,それを指摘し批判することは必要かもしれません.

しかし仮にこの考えかたを一律に徹底しようすれば,あらゆる日常的な価値観のさまざまなあらわれかたを、すべて俎上にあげて検討しなければならなくなります.そうなると過敏ともいえる検閲や神経質な配慮によって,告発者も被告発者もがんじがらめになるあまりに息苦しい世界となってしまうでしょう.

もしかするとたいせつなのは,ある「被害者」感情や「被差別」感情をもつひとたちと,それをもたないひとのあいだに,どうやったら橋をかけられるかだろうと思います.そしてわたしがせつに求めているのは,もたないひとの側からそこにせまることのできる適切な方法です.

そのためにはどうしたらいいか.自分がなぜそのことを気にするのか,そのことを問題にしようとする必然性はどこにあるかということを,自分の経験と感情のなかに問いつづけることでしょうか.

またわかりづらい文章を書きました.わかりづらいのはわたしの考えがまだ未熟だということでお許しください

産科医.#胎児治療#出生前診断#超音波診断#臨床遺伝学 が専門です.仙台在住.「出生前診断と選択的中絶のケア」3月4日刊行しました.妊婦さんから直接いただく個別の質問にはお答えしかねますので,もうしわけありませんがご了承ください.

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  2. 室月淳Jun Murotsuki@「出生前診断と選択的中絶のケア」発売
  3. 2021/04/06 22:20:08 公開
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