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「なぜ日本マンガ・アニメが海外で...」、@dankanemitsu さんからのスレッド

なぜ日本マンガ・アニメが海外で成功しているか?理由は色々ですが、産業の比較優位について考える経済学において一つ大事な大原則があります。国際競争力は国内競争力に比例するということです。日本のマンガ・アニメ産業は国内競争は激しく、作り手は絶えず切磋琢磨してます。しかも市場が多様で巨大

巨大なので規模の経済の概念が働きます。規模が大きい産業ほど、コストを低く抑えることができます。一万人相手の産業と百万人相手の産業では後者の方が有利な点が多いです。しかも日本はマンガ・アニメの市場は複数並存しています。老若男女それぞれの市場があります。

複数の市場があるお陰で一点集中せず多様性が保持されています。似た産業では音楽があります。人はロックもクラシカルもポップも楽します。もしジャンルが一つしかない産業であると勝ち組負け組の格差が激しくなります。スマホゲームは逆に一点集中しやすいために格差が激しい印象があります。

アニメ・マンガ産業は時間の独占が少ないという利点もあります。とかくマンガですね。一日に10冊20冊のマンガを読むことは難しくありません。現実問題としてそれほど読むかどうか別として「特定商品(作品)に掛かりきりになる」側面が薄いのです。アニメもBGVで流すことができますからね。

アメコミの場合、とかくスーパーヒーロー系出版社において重要な収入源は同一タイトルの複数購入です。英語圏の大きなアメコミ専門店に行けばわかりますが、中古を大量に販売しています。アメコミは毎回約32ページの単刊発行形態が基礎です。人気ある単刊の値段は高騰します。

単刊が高騰するのを目当てに複数購入する人も数多くいます。自分用に一冊勝って、後で高騰したら保存用を売りに出すという具合です。アメコミ出版社もこの傾向を武器に中身は同じなのに表紙だけ違うバージョンを複数出したりします。多い時には5種類、8種類、最大13種類というのもありました。

購入する店舗によって特典が違う商売は日本でもけっこう展開していますが、90年代前半までのアメコミ産業の大規模拡大は90年代中盤に発生したアメコミバブル崩壊によって甚大なダメージを受けます。全米の2/3のコミック専門店がこの時に潰れたという一説もあります。

日本で生活していると見落としがちですが、アメコミも実はけっこう多種多様です。スーパーヒーローモノ以外のアメコミもたくさんあったんですが、90年代中盤のバブル崩壊で多くの中小アメコミ出版社は潰れてしまいました。残った作品も中堅ばかりで新参には非常に厳しい状況が長年続きます。

なぜアメコミは同じキャラや物語を何度も使いまわすか言う理由の一つが「定番しか売れない」という強迫観念が強く働いているのかもしれません。日本も「同じジャンルしか売れない」「キャラクターの造形が似たり寄ったり」という問題を抱えていますが、ここで二つ大きな違いを指摘します。

1)アメコミ、とかく人気あるスーパーヒーローモノのキャラクターは作家の所有物ではなく、出版社の財産です。もちろんそのキャラを最初に生んだ原作者と出版社の間の契約書や裁判所での係争結果で所有権の性質はかわりますが、多くの昔から馴染まれているキャラモノの場合、出版社の権限が大きいです。

この結果、新参者は常に昔から継続しているシリーズに対して競争せねばならず、参入障壁が非常に高い。しかも市場が小さい(アメコミ市場は日本の1/8以下)なので人気を積み上げてゆく戦法がとても大変です。言い換えると「ドル箱は常に排他的独占性を発揮できる古参が握っている」状態です。

日本で例えるならば「ジャンプに持込をする作者は手塚治虫の作品とタイマンできる面白さ最初から期待されている」でしょうか。極端な例えですが、それほどまでに競争が一点集中しており、発表できるフィールドがかなり偏っている側面があります。

2)複数のジャンルが十分に共存していないために読者の傾向が長年の間、特定クラスターに固まってしまったことです。特定の産業の健全性や競争力は需要にも影響されます。同じような人が同じようなものばかりを求めていると色々な偏りが発生しています。これは日本でも課題となっていますね。

しかしアメコミ市場においてこれまで非常に非常に大きな比重を占めてきたのが「1950~1970年代生まれの白人男性」です。2020年代現在、アメコミ出版社は色々な模索を始めていますが、依然として現時点で50歳+白人男性の独占性は大きく、この読者層を無視した展開に対してかなりの反発が起き易いです。

実際にアメコミイベントに行くとかなりツライ現実を見せ付けられます。映画会社やゲーム会社、その他メディア展開の関係で出展してる企業はメインショーステージに複数並びますが、一般参加者に家族連れや若者、マイノリティーの方々とてもたくさんいます。

一方、実際のアメコミ作家が出展しているスペースがアーティスト・アレーと呼んだりしますが、こちらに来場する一般参加者は50歳+白人男性が圧倒的に多いです。いかにアメコミのマニア層がこの世代で固められているかが赤裸々にわかる瞬間です。映画化されている割には読者が増えていないのです。

もちろんアメコミ読者層はイベントに来る人だけではなく、自宅で楽しむ人が多いはずですし、50+白人男以外の読者層も(皮肉な事に?)日本マンガで触発されて増えてます。しかし北米での日本マンガ読者層が老若男女と広がる一方で古くから続くスーパーヒーロー系読者は凝り固まっている印象が強いです

つまりアメコミはキャラクター産業においての構造的にも読者層的にも競争が偏り、裾野が広がり難い傾向が現時点ではまだ顕著です。日本は異文化からやってきた作品群でもあるにもかかわらず成功している理由の一つは「既存のアメコミ読者とは違う読者層を開拓している」という点が大きいと思っています

表現の自由を大幅に狭めたコミックコードが残した負の遺産にアメコミは苦しんでいる側面がもちろんあります。日本のマンガ・アニメ産業では子供向けと言う決め付けに跳ね返した結果、多様性が武器であり表現の幅が広めたのが国際競争力を高めたのも事実でしょう。

しかし同時に日本のマンガ・アニメの海外躍進には色々な経済的、産業構造的、文化的側面もあると思います。これらを多角的に考えないとあまり議論が深まらない一元論になったり、現時点では優位に立つ日本において驕りを招くだけで危険だと思っています。(ひとまず終わり)

Dan Kanemitsu-Translator, etc. Likes models and doujinshi. 英和和英翻訳&通訳・文化考証・演技指導、近頃創作も。趣味は模型や同人誌。pixiv.me/dankanemitsu log twilog.org/dankanemitsu

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  2. 兼光ダニエル真
  3. 2021/05/19 18:27:28 公開
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